ディスプレイによる商品写真の色の違い
突然ですが、今見ているパソコンのディスプレイ、正確な写真の色を表現できていますか?
商品撮影サービスを行っている業者は、商品写真の現像やデータをチェックする時には「モニターのキャリブレーション」を定期的に行ってるディスプレイを使用しているはずです。
普段のスマホで撮った写真などを観賞するだけであれば、特にディスプレイに拘る必要はありませんが、業務用に使用する商品写真は「今見ている写真の色を正確に判断する状況」になります。
ネット通販で商品を購入する人が安心して買い物ができるための掲載写真の色補正などを行う場合は、モニターのキャリブレーションは絶対に必要となります。
まず先程からモニターのキャリブレーションと連呼しておりますが、少しこの意味についてご説明します。
商品写真を見るためには当然ですが、写真を映し出すディスプレイが必要です。
家電量販店などのパソコンコーナーで、並んで展示されているPCの画面を見ると一目瞭然ですが、メーカーや機種によって表示されているディスプレイは、光沢感のあるものや、つや消しがある画面など色合いだけではなくディスプレイ自体に各社の特徴があります。
どれが良くてどれが悪いということではなく、それぞれのパソコンに合ったディスプレイ設定がされており、好みに応じて選択できるというのもパソコン選びの楽しい部分ではあります。
では、商品撮影を行う業者が家電量販店でSONYのノートPCが気に入ったから、「今後は商品撮影の色の基準はSONYのノートPCの画面を基準にします」と、言われても困りますよね。
無論、世の中には国産・海外製問わず様々なパソコンやスマホなどネットを視聴する端末環境があり、ディスプレイもまた同じ様に存在しているので、「基準となる色を見るモニター」が必要になります。
こう書くと、「高いモニター買ったからOK」とか、「Macは大丈夫!」という記事も見かけますが、これは間違いで、モニターのキャリブレーションとは、「モニターの表示を正しくする」これが目的ですので、高価であろうがMacであろうが関係ありません。
例えば、最近みなさんが大好きなMac、昔からクリエイティブな現場で使われることが多かったので、一般の人のイメージで「Macは高いし、ディスプレイも信用できる」という意見もありますが、Macだから安心というわけではなく、要は工場出荷時の段階で色再現は正確であったとしても、使用する環境や経年具合によって、ディスプレイの発色は変化してしまうと知っておくべきです。
そうした環境やディスプレイの状態に合わせて、色の表示を正しく行うことが、「モニターのキャリブレーション」であり、基本的には専用のセンサーとソフトを使用して正確な色の表示ができるように調整をしていきます。
色を正しく表示できるディスプレイを買えば万事OKではなく、「色を正しく表示できるようにキープする」、これが大切なのです。
ディスプレイの表示性能をチェック
商品写真などの「正確な色を表示する」ためにまずは、現在お使いのディスプレイの表示性能を簡単にチェックをしてみましょう。
次にご紹介する「画像の文字」が識別できるかをテストしてみて下さい。
まずはこの表示されている文字「LCD」が識別できないということであれば、ブラウザからの表示ではなく、一度画像を保存してからビューアーなどでご覧頂き、チェックします。
それでも「LCD」の文字が1つでも見えないということであれば、現在のディスプレイ状態は微妙かもしれません。
続いてもう1枚の画像を見てみましょう。
今度も同じ様に4文字が4つの正方形の中に隠れています。
こちらは先程の3文字よりも識別が難しくなっているので、ブラウザ上で識別できない場合は、先ほどと同じ様にPCのローカルに保存してフォトショップ等で閲覧チェックしても構いません。
いかがでしょうか?
ある程度のクラスの市販されているパソコンやディスプレイであれば、上記2つの画像の文字の視認と判別は可能だと思いますが、全く読み取れない場合は、「商品写真などの正確な色」を求められる写真の色の加工や編集は避けた方が良いと思います。
この簡易的なテストで、「普段見ているディスプレイ」を信用してはならないと感じた人もいるかもしれません。
これはあくまでも「表示性能のチェック」であり、「色を正確に出せているのか?」のチェックではありません。
ディスプレイの色を正確に見る前の段階の「色を正確に表現できるディスプレイ性能があるのか?」であり、この時点でつまずいていると、もしかしたら今までの写真の色補正は「独りよがりの補正」だったかもしれませんので、今後は注意が必要です。
ディスプレイのカラー表示と人間の目
人間の目は、意外とテキトーですww
同じ赤という色を認識するのに、「緑がかった赤」も「青みがかった赤」も、見慣れてしまうと「同じ赤」のように識別してしまうことがあります。
例えば次の3つの円形のグレー画像ですが、3つの内、正確な色を持つグレーはAからCのうちどれでしょうか?
正解は、Cのグレーが「色かぶりの無いグレー」です。
もちろん、現在この画像を見ている環境(蛍光灯の下なのか太陽の降り注ぐ窓際etc)にも依るため、不正解だったかと言ってご覧頂いているディスプレイが駄目という理由ではありません。
要はこうした環境によって影響を受ける「人間の目」で判断された色は、「曖昧な色」であり、正確な色とは言えません。
商品写真の色の調整を行うには、「正確な色を表示できるディスプレイ」を使用し、撮影されたデータから正確な色を識別できる数値化されたカラー情報を現場で記憶させておく作業も必要となります。
どれだけ「正確な色表示ができるモニター」であっても、最終的に色を調整するのが「人間の目だけが頼り」であっては意味がありません。
現場で撮影された色合いをデータ化したものを「正確な色表示ができる環境に取り込む」これも撮影業者の当たり前の工程です。
つまり「モニターのキャリブレーション」だけを謳っている撮影業者は多いですが、どのような現像環境で最終的な商品写真の色を決定しているのかが重要だと思います。
商品写真を現像する環境の整備
一言で「商品写真で正確な色を表示する」といっても、モニター自体が表示できる「表現色の幅(色空間)」が違います。
よく耳にするsRGBとAdobe RGB、この話については小難しくなるので、気になる部分だけ解説します。
カメラや写真が好きな人が、「Adobe RGB」のモニターでチェックしてみるとネット写真の色合いの違いが分かる!
という人がいますが、ネット通販で掲載されている写真の多くは「sRGB」の色空間で編集されていることが多い。
それを色表現の幅が広い「Adobe RGB」のモニター環境でチェックしても意味が無いのです。
ネット掲載用の商品写真を見るのであれば「sRGB」の色域を正確に表示できる状態でチェックすることが条件であり、
Adobe RGBの方がsRGBより優れているという認識で商品写真を現像・編集するのは大きな間違いです。
商品写真を現像するディスプレイは「色域が広いAdobe RGB領域をカバーしたものが良い」とされていますが、最終的に商品写真を見るのは「一般の消費者」であり、そうした「見る人の環境に合わせた現像処理」が必要となります。
印刷・ネット用途などを目的とした商品写真の現像を行う撮影業者は、「どんな状況にも対応できる」ことが望ましいですが、業者によっては、こうした色空間と現像の手段について誤解しているケースもあるようなので、明らかに色の違う商品写真が納品された場合は、依頼先の作業環境を疑ってみるのも良いかもしれません。
では単純にネットショップを運営する人が、「商品写真を現像する環境」として、ベターな環境づくりとは何か?
撮影業者レベルではなくても、ネット掲載用の写真を正しく色補正できる環境に必要な機材をご紹介します。
まず、機材を買う前に大事なことは、「ディスプレイを見る環境」です。
例えば、窓際で日差しが強く画面に映り込む、または画面の天井後方から蛍光灯が反射しているなど、「ディスプレイを見る時の明るさや遮るものがある場所」は避けるべきです。
このような場所で、日中のお昼休みに10点分の商品写真の色補正を行って、夜に残りの商品写真の色を編集すると、もう写真の色合いは多少誤差が生じてしまいます。
理想としては完全遮光ができると良いのですが、極力「一定の明るさ環境」でデータをチェックできるようにします。
そして、店にPCを置いて作業している人に多いのが、店内の照明の色です。
いわゆるオレンジ色の照明下でどんなに作業しても、ディスプレイを照らす光自体に色がついているので、「商品写真の色補正には向いていない状態」と言えます。
解消するには、ディスプレイ上部にデスクライトを設置し、蛍光灯を「高演色AAAタイプ」に変更すると、色を視認できる精度は格段に上がります。
「高演色AAAタイプ」の蛍光灯というのは、美術館などの絵画を照らす照明として有名で、まさに正しい色を照らす照明として業者の間では常識の蛍光灯です。(さほど高価なものではありません)
そして、いよいよディスプレイとなるのですが、ネット掲載用の商品写真の補正程度であれば、一番手っ取り早いのはEIZOのCS230-CNを購入してしまえば、sRGBの色空間を正確に表示・管理できます。
もちろんEIZO製品以外でも、「ノングレア(非光沢)」で「Adobe RGBもカバー」という条件が良いというネット情報もありますが、先述した通リ、重要なことは色空間のカバー率ではなく、「見る人の環境に合わせた色補正が正しくできるか?」ですので、海外製の安いモニターでも構いませんが、「モニターで色を正しく表示する」ためには、いずれも別途センサーやアプリケーションは必須となります。
トータル的なコストを考えれば、EIZOのCS230-CNであれば細かいことを気にせずに安心してネット向けの商品写真の現像を行うことができます。
商品撮影サービスにおける商品写真の色の再現性
商品写真の色を正確に表示するためのディスプレイ環境について書いてきましたが、きっと「面倒かも・・」と感じた人が多いと思います。
まとめてしまえば、どんなディスプレイを使っても良いですが、正しく色の表示ができるようにディスプレイの状態をキープすれば、公開する媒体毎に「自信を持った色の写真」を掲載できます。
人気のあるパソコンやスマホは、画質や発色にこだわった製品が多く、「正しい色」というよりも「好かれる色」を実現する傾向にあります。
複雑化する消費者の視聴端末環境に対応させるには、やはり「色の基準となる作業環境の整備」は撮影業者のみならず、商品写真を編集・公開する側にも必要となってきているかもしれません。
弊社が納品させて頂く撮影データは、ネット向けの商品写真として安心して運用・公開して頂けるようにディスプレイ環境には特に注意を払っております。
安心できるデータを獲得することは、納品のスピードや価格よりも満足頂けるサービスだと信じております。