商品撮影サービスを通じて、ネットショップの売上向上を願い物撮りを行い、データを納品している私達にとって、ネットから商品を購入する消費者が増えることは、クラアントとの仕事上の関係を良好に保つことができる要因でもあります。
平成最後の年ということで、「ネットで商品を買う」という消費者行動を少し振り返れば、1995年に大手小売店のソフマップがネット通販に参入し、その後タワーレコードやアサヒビールなど続々とネットショップをスタートさせていきました。
ちなみに、今では主流となっている大手ECモールとしては、1996年に日本でもヤフージャパン(Yahooショッピングは99年)は、97年に楽天市場、98年にはアマゾンが参入し、ネット販売が盛り上がりを見せ始めた頃の話題は、「これからは実店舗が不要になる」という極論まで飛び出すほど、ネット通販に神話を求めていた時期でもありました。
ネットショップの黎明期では、商品撮影を代行するサービス業者も非常に少なく、ネット検索で見つけようとしても、写真屋のホームページ程度は存在していても、ネットからやり取りできるシステムも発達していなかったこともありますが、何より当時の写真撮影は、まだまだフィルムでの撮影が主流の時代であり、商品写真をオリジナルのデジタルデータで扱うというネットショップは、大手メーカーが採用する程度だったことを記憶しています。
当時は、商品写真をデジタルデータで納品するには、通信環境や先方の編集環境にも大きく左右されたため、アナログ形式のポジフィルムで納品し、お客様は、使用用途に合わせてポジからデジタルデータに変換する手間があったのも今では懐かしい思い出ですw
但し、今のように1商品8カットをポジフィルムで納品するなんていうのは、相当体力のある企業に限られていたような・・
その後、ネットショップが急激に増加するともに、商品撮影の分野にもデジタル化の波が押し寄せ、アナログフィルムからデジタルデータへの移行は、デジタルカメラとPCのハイスペック化によって商品撮影サービスの在り方も瞬く間に進化しました。
今のEC業界は、撮影納品する業者も商品写真がデジタルデータで納品することが当然であり、ネットショップを開業する側も「ネットで商売をして、お客さんが来てくれるのか?」というネガティブな思考は時代と共に払拭され、消費者側もネットで商品を買うという行動に対して違和感を感じない世代が多くを占めています。
しかし、何かと宇宙やらお年玉やらで話題になるCEOが主導する、大手アパレル通販サイトをはじめ、活発に業界自体は動いてはおりますが、未だにネットで商品を買わない消費者が存在するのも事実のようです。
今回は、単純に商品撮影の活用術やサービス品質を高めようというテーマではなく、いま現状の自社のECサイトで消費者に敬遠される、いわゆる「買いたくないコンテンツ要素(項目)」が含まれていないかを事前にチェックし、ECサイトの改善方法や今後の商品撮影サービスとの向き合い方について少し考えてみたいと思います。
なぜネットショップで商品を買わないのか
まず前提として触れておきますが、ネットショップで商品を買わない消費者も「ネットショップは閲覧している」という点です。
フリマやオークションサービスと比べれば、昨今のECサイトの商品ページは、担当者の商品写真に対する意識も高いので、消費者へのアプローチ写真という点で見れば、商品撮影を失敗しているというケースは少ない。
ただし、ここが意外と見落とされているポイントでもあります。
「失敗していない商品撮影」とは、「実物よりも良い印象を与えるような撮影がされていること」であり、「忠実に商品を説明している画像」とイコールではない点に着目して頂きたい。
現実問題として、ネットショップで商品を買わない理由の第1位は、「実際の商品を手に取って確認できない」というものであり、過剰に好印象を狙った意図的なイメージ写真は、こうした否定派層には逆効果になるかもしれません。
きっと販売する側が、「手に取ることができないからネットで買わない」という理由を聞けば、「より訴追力のある商品画像」を掲載し、商品に対するイメージを膨らませてもらえるように努力しますが、これは商品撮影の業者やネットショップの運営側のエゴでもあります。
個人的な見解として、こうした「過度にPRする撮影方法」は、販売価格と商品写真のクオリティーのバランスが重要であり、激安商品なのに、妙に高級感を全面に出したイメージ写真は、消費者が「掲載写真を不信に感じる」という逆効果にもなり得ます。
その事実を裏付ける事例として一昔前に、こんなことがありました。
アパレルネット通販を新規で立ち上げる運営者にとって、仕入れと撮影は、別に行うものという意識があった中、著作フリーで商品画像付きで仕入れができる「卸売サイト」が流行したことがありました。
国内にいながら手軽に買い付けができ、尚且ネット販売用の画像まで手に入る!何とも便利で効率の良い、あの有名な「卸売サイト」が大人気でした。
もちろん人気を支えた要因の1つは、卸売サイトを通じて購入した商品の写真(モデル画像含む)は、すべて小売店のECサイト上で、自由に使用できる点でした。
例えば、中国や韓国のアパレル業者が撮影したモデル商品写真や物撮り写真が自社のネットショップで使用可能であったので、改めて自社などで商品撮影を行う必要がなく、コスト削減に大いに貢献してくれる!
・・・と、当時、多くの買い付け利用をしていたECサイトの運営者は思ったはずです・・
しかし現在では、こうした「著作フリーで商品画像付きで仕入れができる卸売サイト」が日本のネットショップで重宝されることは少なくなりました。
理由としては、撮影コストは削減できますが、ライバル他社との差別化が困難になる点や、無料提供される商品画像を扱うネットショップの信頼度が低いのでは?という消費者意識が広まったからです。
もう少し言い方を変えれば、ちゃんとしたネットショップは、オリジナルの商品画像でなければ勝負できないことを知っていると表現するのが正しいのかもしれませんね。
一見便利でコスパに優れているように思われた「買い付け商品と商品写真をフリーで使用できるサービス」ですが、当時の楽天市場やヤフーショッピングでは、同じ画像ばかりが商品一覧に溢れしまい、消費者がそうした類似画像でプチプラ商品を販売するネットショップを敬遠する結果になりました。
こうした事例から教訓が得られるとすれば、「他社と同じ商品画像を使ったから売れなくなった」のではなく、そもそも、その商品画像に消費者を信頼させるだけの「説明画像としての価値」が無かったため、消費者が警戒したことに気づくべきかもしれません。
日本のネット通販には日本人の国民性に合わせたECサイトの運営方法みたいなものがあります。
同じアジア圏でも、中国や韓国などで商品撮影された画像は過度なレタッチ(修正処理)をしている写真が多く、「実際の商品と掲載写真との質感に大きな差」がある事象は珍しくありません。
他の国では、「よくある事」であっても、そうした過度にレタッチされた商品画像を信じて購入した日本人の多くは、「信用できないショップ」という悪い印象を購入先のショップに抱いてしまいます。
この章の冒頭で、ネットショップで商品を買わない理由の第1位が、「実際の商品を手に取って確認できない」と感じている日本人が多いのは、デジタル処理で何でもできそうな!?「商品写真のデメリット」を知っているからかもしれません。
しかし、逆に消費者が冷静に判断できる信頼のできる説明画像(商品写真)を掲載して商売を続ければ、「買わない」から「買ってみようかな?」に変わるきっかけになるのかもしれません。
ネットショップ向けの商品撮影サービスをしていると、他社と差別化するためのイメージ戦略として、商品撮影サービスの利用を検討する企業も多く、それは1つの側面から見れば効果的な方法ではありますが、ネットショップの利用者から見た「良いイメージの店舗とは何か?」、を考えた時に、最も優先すべきは、商品撮影などで自社のイメージアップを図ることだけではなく、SNSなどで丁寧に商品についての説明を補足し、地道に情報を更新・継続する「売る側の真摯な姿勢」なのかもしれません。
商品撮影だけに縛られずに自社のサイトを分析
ネットショップで商品を買わない理由の第1位として、「実際の商品を手に取って確認できない」という理由を説明してきましたが、では1位以外の「ネットで買わない理由」とは、どんなランク付けになっているのか見ていきます。
第3位に「ネットショッピングの信頼性が低い」
第4位に「個人情報のセキュリティ面への不安」
第5位に「会員登録が面倒・不安」
と続きます。
このリサーチ結果を見た人の多くは、「システム的にスグに解決できそうな項目だ!」と感じたはずです。
消費者の送料の負担を軽減または無料にして、UI上でも簡単且つ安心して利用できるネットショップのシステムを構築する・・
消費者の不安要素を取り去る項目の改善策ですが、この改善項目は、現在の参加型のECモールでは標準装備の機能であり簡単に着手できます。
仮に大手モールに参加しておらず、自社で販売システムを構築していたとしても、消費者の信用に応えるための項目の改善・更新作業は、難しくはないのが現状です。
どんなネットショップも、表面的に見えている「買わない理由を改善できる」ということは、こうした項目を改善するだけ、本当に今までネットで商品を買わなかった層を巻き込むことができるのでしょうか?
私は、手間のかからない作業を施しただけでは、新規顧客は絶対に生まれないという考えです。
ライバル他社も手軽にできるシステムの改善が終了したとして、では、その先の改善策としてプランはあるのか?
ライバルに負けないためにネットショップが考える手段が、「綺麗で説得力のある商品写真で差をつける!」と、安価で効果的な商品撮影のサービス業者探しに躍起になってしまうようであれば勿体無い気がします・・・
商品撮影サービスを生業にしている業者の立場からすれば、商品写真で手軽に印象UPを狙う企業が増えることは歓迎すべきですが、本音を言えば、それよりも、「扱う商品に絶対的に自信があるのか?」を自己分析(社内で検討)してみることの方が大切だと感じています。
この1位から5位までの買わない理由の調査結果から読み解くことができることは、どこの企業も手軽に着手できるシステム的な改善項目をクリアせよ!という単純なことではないはずです。
他社との差別化を行うための施策として、当たり前のシステム構築+商品撮影サービス至上主義になっていないかという、自己分析も必要だと思います。
例えば、自社で扱う商品と全く同じ商品を扱うネットショップが存在する場合、多くのネットショップが、「あの会社より綺麗な商品写真」、または同じようなカット内容の商品画像を求める傾向にあります。
それをすべて否定する気もありませんが、商品撮影の出来栄えに依存(業者任せ)してしまう類似商法では、仮にライバル会社がオリジナルの商品の販売をスタートさせた時点で、すぐに優位性を奪われる覚悟も必要です。
商品にしても、撮影にしても、今読んで頂いている文章にしても、「オリジナルの強み」は、必ず存在します。
弊社に商品撮影を依頼される方の中には、「他社も同じ商品を扱っているので、目立つようにして欲しい」という相談もあります。
他社も扱う“同一商品”の物撮り・・
正直申しまして、普通の商品撮影のプランで同じ商品を撮影してもA社が撮ったら別物に変化する!なんて魔法の撮り方はありませんw
むしろ、異なる撮影者が同じ商品を撮影して全く違う印象の商品に見えるなら・・それも問題ですよね!?
あくまでも物撮りの説明画像として、基本的な撮影セオリーは変わらず、大きく変化を期待するのは賢明ではありません。
では、商品撮影などの写真・画像以外の部分で、どうやって同じ商品を扱うライバル他社と差別化を行うのか??
実は、答えは、とってもシンプルです。
その商品をどうやって消費者に伝えたいかをじっくり考ることで突破口は見えてきます。
つまり、同じ商品であっても、売る人間が変われば、説明方法は十人十色だということです。
他のネットショップがこうしているから、自社もこうしなければならない!
この考え方が、商品ページのオリジナリティ(独自性)を減退させる1つの要因にもなっています。
例えば、同じメーカーの電化製品の「空気清浄機」を扱っていたとして、他の会社が「空気の洗浄力が今までの1.5倍上昇」という言葉の表記のみでアピールしているのであれば、同じアプローチは絶対に避けて、同面積の和室、洋室での空気洗浄力の違い、設置場所によって、同じ6畳の部屋の空気洗浄完了に要する時間の違い、はたまた、犬や猫など、ペットの有無によるフィルターの交換時期の違いを実験するなど、商品を購入する際のヒントを丁寧に解説していたら、文字だけでアピールするネットショップと比較して、消費者に与える信用度は確実に向上します。
商品撮影だけに縛られずに自社のサイトを分析するということは、「消費者に向けて説明不足はないか?」を常に考えることも、オリジナリティを生むヒントにも繋がります。
もしかしたら、どれだけ濃い情報を掲載しても、スグには購入してくれる顧客にはならないかもしれません。
しかし、即戦力は無くても、商品情報が細かく掲載されているサイトには人が必ず集まります。
上記の例で言えば、その時は購入に至らなくても、「情報サイト」として拡散されたり、ブックマークされるかもしれません。
そういった消費者行動の喚起が、次に商品を買う時に検索エンジンに左右されずにダイレクトに自社の通販サイトに訪問してもらえる行動に繋がり、商品撮影やSEO対策に依存する商売から脱却できる手段にもなります。
あそこの会社がこういう商品写真を使ってるから、自社も同じような商品撮影を・・
商品写真にこだわるあまりに失敗するネットショップの多くは「タイミングの読み違い」があります。
綺麗でスタイリッシュで、成功している先輩ネットショップにも、“はじまり” は、必ずあったはずです。
店構えを立派に見せる商品撮影と消費者を味方する商品撮影、この違いを理解できれば、必ず独自性のあるユニークなネットショップになる気がしています。
商品撮影の力で、買わない客を買う客に変えるには
扱う商品に愛情があり、“売る気”のあるネットショップは、最終的には商品撮影に少なからず期待をしてくれるものです。
個人的には商品撮影サービスを行う側も、「サービスのボーダライン」を明確に意識すべきだと感じています。
どういうことかと申しますと、商品撮影サービスを行う業者のタイプには2つのパターンがあり、1つは、写真撮影が基本的に好きであり、サービス業務としての範疇ではありますが、「探究心のある撮影業者」、そしてもう1つは、完全に利益追求型のいわゆる「撮影を代行するだけの業者」です。
どちらも経営という点で考えれば不正解はありません。
しかし、弊社の商品撮影.SHOPというサイトは、サービススタートの段階から、「キチンと寄り添う商品撮影サービス」を掲げています。
商品撮影の力で、買わない客を買う客に変えるには、依頼主の意見+αで撮影者側から見た視点が重要だと考えているからです。
要は依頼主が見落としがちな商品アピールポイントや、料金が高くなるから指示されなかったけど、依頼主はこのカットも撮影して欲しいのでは?という請負側の心配りというか、「暗黙の心の探り合い」ができれば、買わない客にも気づきを与えて、“買うきっかけ”を与える撮影カットが生まれるかもしれません。
もちろん、費用に含まれない撮影作業(予備カットの撮影など)は、請負業者の裁量となり、一定の範囲となりますが、これをサービスとして撮る業者と撮らない業者とでは、単純に撮影料金だけの比較では言い表せない“大きな差”があるように感じます。
例えば、アパレル商材のボトムス撮影をしていて、カメラマンが現場で「後ろのポケットの裏地」に特徴があることに気づき、クライアントからは撮影するように指示はされていないが、「予備カット」として撮影納品をする。
一方、利益追求型の撮影スタジオのカメラマンは、裏地の特徴に気づきはしたが、クライアントから「指示されていない箇所」という理由で撮影せず見送ったとします。
その後、同じ商品がA社・B社のネットショップで、A社では「裏地カットの無い商品ページ」、B社では「裏地カット有りの商品ページ」を購入しようか迷っている消費者が発見し、「裏地の特徴写真」を購入の決め手として、Bショップで最終的な購入決断をしたら、逆説的に、些細な商品撮影のサービス不足で本来買うであろう客を“買わない客”にしてしまうことにもなります。
写真撮影において、「シャッターチャンスを逃すな!」という言葉が、よく使われますが、これは単に瞬間的なシーンを見逃すなと言う意味ではなく、「撮るべきと感じた時にシャッターを押したか否か」という、カメラマンとしての心構えでもあります。
営利目的を追求してカット数を決めることは、撮影業務としては間違ってはいません。
しかし、1人の撮影者と考えた時に、いま自分が撮らない1枚の写真で購入者数が左右されるかも!?という心理が働くか否かで、商品撮影サービスの力、代行業者への支持率の違いに影響するのではと考えます。
ネットショップ担当者が考えるべき商品撮影サービスの選定
商品撮影の業者が注目する、客がネットショップで買わない理由として、ネットショップ自体のシステム的な改善点や商品撮影に関する考え方について触れてきましたが、ネットショップの運営担当者が、商品撮影サービスを選定する際のヒントになれば幸いです。
弊社の商品撮影の料金は、極めて平均的であり、撮影スキルも日本屈指の技術習得を目指し日々努力をしている最中です。
一見すれば特徴の無い商品撮影サービスのように感じますが、リピート率が高い理由は、絶対に流れ作業で撮影しないからかもしれません。
きっと平均的な撮影料金でサービス内容も平凡であれば、どこの撮影スタジオに依頼しても構わないと感じるはずです。
弊社の特徴は、使用している機材はデジタル最新機器であっても、作業はアナログを敢えて意識しています。
撮影日とは別日に必ず撮影担当者が実際に商品を触り特徴を把握する。
2カット程度の撮影数の増加は、当たり前であり、気付いたのに撮らないことの方が、写真屋(商業カメラマン)としてアウトだという現場の雰囲気がある。
こうした行動も昔の写真屋であれば、当たり前であったのですが、「効率重視の時代」では、ネガティブな意見もあるのも事実です。
しかし、ネットショップに訪れる消費者が人間である以上、ネットショップ担当者が考えるべき商品撮影サービスの選定の基準は、効率性や撮影単価だけではなく、“人が撮っている感覚を味わえる撮影業者を選ぶこと”が重要であり、これが消費者目線のページづくりの第一歩になると思います。
ネットショップで商品を買わない理由として、「実際の商品を手に取って確認できない」
視覚だけでは判断できない、こうした消費者の心理も十分に理解できます。
それと同時に、商品購入の判断材料として商品撮影サービスを行う業者をはじめとする販売に関わる側が、もっと消費者に寄り添えば、いつか「実際に商品を見に行くよりも、ネットの方がリアルだ」と、感じてもらえる日が来ると信じています。