物撮りが簡単に誰でも上達できる魔法の撮影テクニック!
申し訳ないですが、そんなものはない!
商品撮影サービスを利用するお客様の中には、物撮り撮影を経験し、断念した人も多い。
実際ネット上では、いたる所に「物撮り撮影のテクニック」に関する情報が氾濫し、ライターが、たまたま上手くいった物撮り経験で、「こうしたら商品撮影が格段に良くなった!」、「プロの現場の物撮りはこうだ!」など、趣味なのか本気なのかよく分からない記事もあります。
結論から言えば、物撮りのみならず、業務用途の写真撮影のテクニックをプロが教えられるのは導入部分、基本中のキホンのことばかりで、写真が撮れることが前提なので、「誰でも簡単にできるテクニック」なのです。
ではなぜプロの物撮り業者はそうしたノウハウやテクニックの深い部分を、「簡単物撮りマニュアル」として世の中に公開しないのか?
私の主観だけではなく、本当に実務経験を積んだカメラマン、スタジオスタッフの声を代弁するなら、
そんな記事を読んでテクニックが身についたら、プロはいらないでしょ!
と、鼻で笑っていると思う。
ネットでカメラ機材や撮影方法など何でも情報が手に入る時代になったと言えども、本当にオリジナリティのある写真を撮ってる人間は、ライティングなどの撮影テクニックを机上だけで学んで終わりなんていうことはない。
この記事で考えて欲しいと思うのは、物撮りを簡単な作業だと思わせ、ネットショップ運営者に無用な撮影機材や商品撮影セットを売り込むような記事はやめて欲しいと感じたからです。
趣味として、また写真を学ぼうとしたショップオーナーさんが撮影に関する基本的なことを情報として学ぶことは悪いことではありません。
しかし、物撮りを生業としている人がいる
引退間近のプロなのかフリーターなのかよくわからない経歴の写真家が登場して、ネットショップ運営者に向けたアドバイスや実践テクニックを披露した、ぬいぐるみやキーホルダーの参考写真を見せられても、微妙な気持ちになりますし、その出来栄えはと聞かれても感想に困る仕上がりで、商品写真は、ちょっとした物撮りテクニックで簡単に実践できるような書き方をされるのは心外です。
とはいえ、なぜ物撮り関連の記事がたくさん世の中に出回るのかと言えば、その多くは本当に商品撮影を学んでもらう目的ではなく、写真撮影やカメラ、撮影機材などを扱っているサイトのコンテンツの一部として、「物撮りネタ」や「撮影テクニック」は撮影関連のページを増やすための有効な手段であり、一般の人が写真を始めようと思って、できるかできないかは関係なく、記事ネタとしての“旨み”があるから記事が溢れている側面もあります。
そんな大人の事情を逆手に取ってw、本日は物撮りテクニックに関するツッコミを入れていこうと思います。
本当に撮影テクニックを身につけたい人は、撮影講座やセミナーにでも行きましょう。
では早速ですが、物撮り業者が本音で語る誤解だらけの物撮りテクニックを綴ってみます。
物撮りの心構えは簡単に身につかない
物撮りを行う時は、撮る目的と必要な写真を知ろう!
よくある撮影前の心構えについて書かれる内容にこんなものがあります。
◇よくある物撮り心構え1
物撮りで大切なことは、商品だけに注目をせず、目の前にしている商品がどんな場面で使用されるのか?という具体的なイメージを持ちましょう。全体的なイメージを連想するだけで商品写真の仕上がりは、格段に違ったものになり、物撮りに対しての心構えが身につきます!
◇よくある物撮り心構え2
アパレル商品などの洋服の物撮りでの心構えとして、その服がどんな年齢層に適しているのか?、実際に着ている人のイメージを想像しながら物撮りを行うと、消費者が購入したくなるような商品写真に仕上がります。
◇よくある物撮り心構え3
物撮りの目的が明確になったら、商品写真を見る人が共感できる写真が撮れるまで、何枚も撮影をし、納得のいく1枚が撮れるまで、時間を惜しまずチャレンジしましょう!
但し、ネットショップ運営はスピードも命ですので、コストと時間の兼ね合いも考慮しましょう!
果たして、役立つ情報なのでしょうか!?
最高にツッコミたくなるのは、物撮りの心構え1・2に共通する「具体的なイメージを持つ」という部分。
文章的にはそれらしいことを書いていますが、物撮りをしようとする人が、このテクニックを読んでもスタートの心構えとして、何も具体的なノウハウがイメージできないと思いますが、果たして大丈夫なのだろうか??
これでは私のブログよりも中身の無いテクニックである。
続いて、心構え3です。
納得のいく写真が撮れるまで何枚も時間を惜しまず撮る!
私はこのブログで、自社で商品撮影を行うより、物撮り業者に頼んだ方が安くなると何度も書いています。
本当に心構え3のように撮影時間とコストを考えるならば、物撮り業者に見積もりを依頼することをオススメします。
そもそも物撮りをしたことの無い初心者が、最初から具体的なイメージを持って、撮影に取り掛かっていたら、逆に怖い!
物撮り問わず写真は、「商品をしっかり観察すること」です。
商品を観察する前に、着る人の年齢層や、売れた後の購入者への余計な妄想をする前に、目の前の商品に向き合うことが先決です。
物撮りのライティングは簡単に身につかない
物撮りのライティングは、すべての商品写真の品質を決めます!
商品写真を撮るための物撮り用のライティングのテクニック記事に書かれていることが多い、「ライティング命」という意味合いの言葉。
どんな写真でも光が無ければ写真は撮れないので、光をコントロールするライティングは重要ではありますが、そこにはこんな事が書かれていることが多い・・
◇よくある物撮りライティング1
物撮りライティングの基本は、商品に対して光をまんべんなく回すことです。
魅力的な商品写真は、「全体に光が均等」に当たっており、柔らかい光が多く、光が強すぎたり弱すぎるのは禁物です。
◇よくある物撮りライティング2
物撮りを始めたばかりで慣れないうちは、商品の一部が白く飛んでしまったり、光量不足で黒く潰れてしまったりすることもありますが、どうしても均一に光が回らない場合は、写真編集ソフトで修正も可能ですので、諦めずにチャレンジしてください!
物撮り業者の見解としては、もう何でもアリなのかと思うほどのザックリ感ですが、こうした内容が物撮りのライティングの基本として書かれていることがある。
光を回すことについての具体策がなく、最終的にはフォトショップで何とかして修正する、もはや撮影テクニックなのか、フォトショの編集テクニックなのか記事の迷走感が見て取れる。
物撮りにおけるライティングは、照明の当て方を公開する前に、カメラの扱い方と写真の基礎を知らなければ、年中無休で照明とにらめっこをし、迷走することになります。
物撮り業者が撮影メモとして残すものは、「出た目と撮り目」という考え方があります。
これはライティングではありませんが、自然光以外の照明を使った物撮りをする際は、カメラ側とライティングのバランスを常に気を遣って作業をします。
手っ取り早く物撮りのライティングの基本を公開するのであれば、カメラ側で光の質感の変え方を学ぶのも1つの近道です。
物撮り背景のセンスは簡単に磨けない
物撮りのテクニックとして次によく挙がるのが「商品写真の背景」です。
写真撮影を理解する上で、白い背景で学べることは山のようにありますが、物撮りテクニックを学ぶ人達は、物撮り業者よりも何段も階段を飛び越えステップアップを目指すので、お手軽に撮影背景を変えて、物撮りが上手くなった気分になりたいようだ。
そんな物撮りの背景について書かれる撮影テクニックにこんなものがある。
◇よくある物撮り背景の記事1
商品写真において、物撮りをする時に、背景を変えることで、一瞬にしてイメージを変えることができます!
商品とのコントラストを重視した背景を選ぶことで、商品がより目立ち、消費者の目に触れる機会も多くなります。
◇よくある物撮り背景の記事2
物撮りの撮影背景は、撮影専用の背景紙などは必要がなく、安価にホームセンターなどで揃えることも出来ます。
物撮りを始めたばかりで、商品写真にアレンジを加えたい!という人は、まずは撮影背景を気にしてみては?
物撮り写真で背景を変えようと思う人の大半は、「イメージ写真が撮りたい!」と感じている人でしょう。
ネットショップなどで見かけるプロが撮っていないと感じるイメージ写真の多くは、商品と撮影背景が合っていない状態の画像です。
妙にゴチャゴチャで混雑している商品と背景のバランス。
こうした“見づらい写真”は、物撮りのセンスだと感じる人もいるかも知れませんが、センスではなく「商品写真への考え方」の違いです。
よくある物撮り背景チェンジを推奨する記事では、「見栄え重視」で書かれたものが多く、背景を変えれば“それなりに栄える写真”にはなりますが、商品写真という観点で見ると遠い位置にある写真です。
物撮り業者が撮影背景を考えるスタート地点は、「商品の邪魔にならない背景選び」です。
一見すれば、撮影背景が賑やかでもキチンと商品が目立つようなバランスを考えています。
それは撮影背景の色や柄、材質だけではなく、商品写真の目的やライティングも含めた総合的な経験とチャレンジで成り立っています。
物撮りをスタートして間もない時期に、「背景を変えて上手くなった気になる」これが、背景ごちゃごちゃイメージ写真誕生のきっかけにもなりますので、ご注意ください♪
物撮りイメージの共有は簡単ではない
物撮りした商品写真を購入者が分かるようなイメージに昇華する!
正直、これがサクッとできるようなら、物撮り業者に転職した方が良いと思えるような精神論になっている。
写真というのは、それぞれ見た人の感覚によってイメージは変わるものです。
例えば、「猫のかわいい写真」と言っても性別や世代によっても受けるイメージは異なりますし、写真を見た時の環境や気分によっても左右されます。
そうした視覚と心理状態によって目まぐるしく変わる「写真を見るイメージ」を、物撮りをはじめたばかりの人に実践するよう促す内容には苦笑いしかないですが、さらに撮影テクニックではよくこんな風に書かれている。
◇よくある物撮りのイメージに関する記事
物撮り作業というのは、様々な角度から写真を撮り、色々な視点から商品の魅力が最大に発揮される部分を見つけていくことです。
我慢強く粘ることで商品が引き立つ最高の写真が見えてきます。
商品を高い位置から眺めてみたり、商品の全体像を眺めることを繰り返しながら作業を進めましょう。
低いポジションから撮られた商品写真は手に持って実際に見る位置とされるので、利用シーンが想像しやすい写真に仕上がります。
ここまで来ると、もう感動すら覚えてしまう。
ネットショップの運営者が物撮りをはじめて、消費者目線に立った、プロ的なアングルを駆使し努力する姿が目に浮かんでしまうではないですか!
できるならば、その貴重な物撮りテクニックを学ぶ時間、商品ページの制作や商品登録、新作商品の仕入れ作業に当てて下さい!
上記のような記事を信じて写真業界の荒波に漕ぎ出せば、膨大な時間を費やし、商品写真が上手くなった頃にはネットショプが存在していないこともあり得ます!
お分かり頂いているとは思いますが、物撮りを含め撮影テクニック編で「イメージ」とか「想像させる」という言葉が出てきたら、そこに書かれている撮影テクニックには、危険な領域があると考えて間違いないと思います。
漠然とした小手先のマニュアルはどこの誰に向けた記事なのかが見えない点や、撮影レベルのゴール地点が意味不明になっています。
こうした撮影テクニック記事のまとめとして綴られるのは、最終的には「このテクニックをマスターすれば、売上は絶対に変わります」となるのが通例ですが、ネット通販は商品写真以外でも変更しないといけない箇所はたくさんありますので、撮影テクニックに心を奪われる前に、SEO対策でも学んだ方が売上は向上するような気がします。
使わない物撮り機材や商品撮影キットはゴミになる
本格的な物撮りにチャレンジするのであれば商品撮影キットや専用機材の購入も有効です!
上記の常套文句のような物撮りを自社で行うために必要な撮影機材や商品撮影キット(BOX)を揃えれば、「撮影費用が抑えられる」という意味の甘い誘い文句。
以前にもどこかの記事で、自社で撮影した場合と物撮り業者に頼んだ場合のコストの比較をしましたが、もう1度簡単に説明すると、10年以上前であれば、物撮り業者に商品写真を依頼すると結構な撮影予算が必要でしたが、現在ではネットショップ向けに物撮り業者の撮影単価の相場も低くなってきています。
物撮り業者と、商品撮影キットなどの撮影機材を売りたい業者側との立場の違いはありますが、自社撮影でコストダウンという記事についていつも感じるのは、前提が抜けている状態で、機材を買って自社撮影した方が得だと結論づける書き方です。
どういうことかと申しますと、仮に毎月30点ほどの新作商品を追加するネットショップが、自社撮影でコストダウンを狙って、商品撮影キットなど自社撮影に必要なカメラを含む撮影機材を15万程度で揃えたとします。
物撮り未経験の人が時給1,500円で、商品30点を過不足無く撮影したとして、撮影作業に費やす時間が6時間程度、人件費として9,000円。
業者に頼むと弊社の最安の撮影プランで30点で撮影費用は3万円、つまり21,000円のコストダウンに成功する!
これが、商品撮影キットなどの撮影機材を売りたい側の見解であり、自社での商品撮影にチャレンジする理由だったりましますが、ここには撮影に取り掛かるまでの時間や、現像や書き出しなど、撮影前後の諸々の事情にかかる時間、そして専門知識や技術を習得するまでにかかる労力や時間は、すべて省略されています。
外注費用カットの為に、ネット担当者1名で運営作業を行いながら継続して撮影を続けることは困難です。
そして最大の盲点は、「物撮り業者と同じ品質の商品写真ができる」という妄想があることです。
物撮り業者と一般の方の撮影スキルを同一と見なしている、商品写真で一番大事な前提が欠落しています。
事実として、激安の物撮り業者で納得がいかない商品撮影を経験してしまうと、お手軽な商品撮影キットや簡易的な撮影機材で、自社撮影にチャレンジしたくなる気持ちも理解できますが、そうした企業はアレとソレと、コレぐらいですw
また商品撮影キットを販売している企業が、自信満々に参考写真として掲載している画像を物撮り業者の視点で見れば、お世辞にもプロレベルというキャッチコピーを使って欲しくない仕上がりであることも事実です。
また商品撮影キットなどで撮られたサンプル写真を、スタジオが使用している「正確な色再現ができるモニター」で見ると、色被りが目立つ商品写真が多いことも気になります。
扱う商品サイズによっては商品撮影BOXなどは重宝するかもしれませんが、作業量の増加や商品写真の品質の問題を確実にクリアできなければ、やがては効率の悪さに気づくか、または写真撮影が好きでなければ飽きてしまい、物撮り機材や商品撮影キットはゴミになります。
本当の物撮りテクニックは、費やした時間の中にある
冗談交じりに、物撮り業者が教える誤解だらけの撮影テクニックと題して、ネット上の物撮り記事のあれこれについて書いてきましたが、物撮り業者は、それぞれのスタジオスキルや運営方針によって撮影テクニックのレベルや経験値は異なります。
物撮り業者が教える撮影テクニックは、無駄な情報ばかりではありませんが、物撮り業者と一般の方の商品撮影との違いは、業務を委託された責任を伴う状況で撮影に向き合った時間にあると思います。
個人的には撮影テクニックを人様に披露するような大それた記事は書けませんが、物撮り業者の一人として言わせて頂くなら、商品撮影は、誰でも撮れるが、探究心があって好きでなければ続かない作業であり、ネットに情報を求めている時間があるなら商品に向き合って欲しいと感じます。
即席でできる撮影術やライティングテクニックは、そうした情報を書いた人が、「その時に感じ、その時にできた撮影方法」です。
依頼元の商品ジャンルや撮影対象となる商品、サイズや素材など、物撮りの対象として扱うモノが変われば、その数だけ撮影テクニックは生まれます。
簡単に撮っているようで撮ることが難しい。
それが物撮り業者の撮影テクニックです。