自社で商品撮影を行うための撮影機材とは?
一般の方が自社で扱うアイテムを撮影をしようと考えた時に、目に触れる「商品撮影に関するテクニック情報」では、カメラ選びや光の回し方など、何かと実践的な撮影方法が掲載されているようですが、そうした情報を元に撮影を完了しても納得のいく仕上がりにならないことがあります。
カメラも皆が良いというものを揃えた、ネットショップ向けの商品撮影キットのような、かさばる撮影機材も準備した。
でも商品写真を掲載して消費者の反応は、思ったよりも向上しないのはなぜでしょう?
もし撮影業者が「ゼロから商品撮影を行う機材を準備しようとした場合」、まず予算を投じるのは、情報商材でも商品撮影キットでもない。
今回は、消費者が商品を選び参考にする写真を撮るために揃えるべき機材を順を追って説明します。
撮影テクニックやワンポイントレッスンのような実践編より大切なことをご案内します。
商品写真を撮る前にディスプレイを買う
写真撮影という広い分野で考えた場合に真っ先にこだわってしまいがちな機材としては、カメラやレンズといった「撮る行為」に対して必要な機材につい興味を惹かれてしまいます。
もちろん写真が好きで趣味でも撮る、または単にカメラ所有の喜びを感じたいのであれば、こうしたカメラを選ぶことも機材集めの楽しみの1つですが、「商品写真を撮る」という目的において、カメラ選びは最優先事項ではありません。
まずネットショップを運営する人が自社で商品撮影を行うのであれば、最優先で必要な機材は、
「写真を正確に見るためのディスプレイ」
そうです!
極端に言えば「写真を見るためだけのディスプレイ」の準備を置いて優先することはありません。
写真用途のディスプレイとは、ネット掲載する写真を現像・編集するなら、「sRGBの再現性」に優れたもの、紙媒体や映像素材を扱うのであれば、それぞれの用途別に「正確にカラー再現ができる機能を備えたディスプレイ」が必要となります。
商品撮影に向いているディスプレイ一覧
商品写真に求められることは「実物に近い色の再現」であり、消費者がネットで購入した商品が、ネット掲載画像と実物の商品カラーや質感に違和感を感じやすいのも、商品の色合いが起因していたりします。
写真を現像する便利なソフトや光の回し方で印象が変わる撮影テクニックとか、そんなものより大事なことは、「商品写真」としての忠実な色合いを再現するという大前提条件をクリアすることが最優先です。
どんなに素晴らしい撮影テクニックがあっても、商品写真の色再現が微妙ならば、全部が微妙な写真になります。
ディスプレイ(モニター)は、商品撮影された写真を見るという初歩的な機材ですが、意外と軽視されがちな機材でもあります。
良い撮影業者はモニター環境にも細心の注意を払っており、商品カラーの基準となる色の再現性に自信を持っているものです。
間違ってもMacを使っているから安心!、なんていう理屈は、商品写真の分野では通用しません。
カラーマネジメントされたディスプレイ(モニター)は、プロが1番頼りにしている機材かもしれません。
商品撮影のカメラは単なる道具
次に皆が大好きなカメラの話になるのですが、個人的には業務として使うカメラは「単なる撮影道具の1つ」です。
レンズフィルターなんていうものは使いませんし、壊れたら買い換える、カメラやレンズはただの消耗品です。
こう書くと愛情が無いように感じるかもしれませんが、「写真に愛はありますが、カメラに愛は無い」これが本音です。
カメラは商品写真を撮る道具であり、メーカーやグレードはさほど気にしたことがありません。
唯一気にしているのは、値段やカメラのグレードよりも発売時期の「新しいカメラを使う事」です。
理由としては、デジタルカメラの業界は、新製品が出るたびにスペックの向上が図られています。
例えばニコンの高級機として発売されたカメラに「新処理エンジン搭載」という刺激的な広告がなされていたとします。
きっとカメラ好きの方ならば、最新の技術が詰め込まれた高級カメラだから10年以上は現役だ!と奮発して購入するでしょう。
間違いではありません。
その時は最新の技術が詰め込まれているのは否定しませんが、10年後、いや1年後はどうでしょう?
技術の進歩と言えばそれまでですが、メーカーは無情であり、暫くすれば高級機にだけ搭載されていた、あの「新処理エンジン搭載」の文字が他のグレードにも標準搭載されることは日常茶飯事で起こっています。
ネット掲載用の業務用カメラとして揃えるのであれば、数年に1度しか手が出ない高級カメラを買うよりも、「中級機レベルの新モデル」を手に入れ、「その時の最新技術の恩恵」を受けることがベターとも言えます。
カメラについて酸いも甘いも噛み分ける自信があるのであれば、「カメラ毎の特徴」を考えた購入方法もありですが、今から商品撮影を始めようとする人は、何も考えず「最新のデジタル一眼のレンズキット」で十分です。
もちろん、メーカー問わず、自分で実機に触れ、握りやすくて疲れないものを選べば良いと考えます。
また商品撮影講座やテクニック集の記事では「レンズ選び」にもこだわっているようですが、「標準ズームレンズ」が1本あれば、ひとまず何も必要はありません。
レンズを何本も揃えて気合を入れても、気づけば同じレンズがカメラ本体にずっと装着されたままというパターンはよくあります。
重要なのは、「商品写真を撮るためのカメラ・レンズ選び」です。
よく業務用に使うのであれば高価なカメラを選ぶとどんな撮影にも対応できますという、何の根拠もない記事もありますが、高級カメラを買ったという所有欲が満たされても「正確な商品写真」が撮れる保証はありませんので、業務用途だから高いカメラが必要という概念は捨て、安くても新しい製品のカメラ&レンズを買うクセをつけましょう。
常用カメラは、RAW撮影ができて、ホワイトバランス、シャッタースピード、F値(絞り)、ISO感度、露出が手動で設定できれば何でも構いません。
むしろこの条件を満たしていないデジタル一眼レフを探すほうが難しいほどエントリーモデルでももちろん標準装備の機能です。
補足としては、ストロボを使う予定ならホットシュー(外部フラッシュを設置するためのパーツ)があるタイプを選ぶようにして下さい。
商品写真に照明機材と撮影背景は必須ではない
誤解を恐れずに書くのであれば、適当なカメラを用意して撮影した画像をPCに取り込み、正確な色で商品写真をチェックすことができるディスプレイ環境が整えば、商品のサイズこそありますが、何でも撮れます。
実際問題として照明機材を揃えたり、背景ペーパーを用意することで、より綺麗な仕上がりの商品写真を目指すことはできますが、昨今のアパレルファッション通販サイトの傾向をご存知でしょうか?
ショップスタッフが、事務所や店舗内でコーディネートされた自社商品を着用してパシャリ!
こんな商品写真の撮影スタイルであれば、ストロボ照明や背景ペーパーによる演出は不要なものであり、必ず揃えなければならない撮影用品ではなくなります。
つまりディスプレイ環境とカメラがあれば、工夫次第で商品写真を撮ることは可能であり、人物だけではなく雑貨などは店内の空いたスペースなどを工夫するなどして、オリジナルティのある演出空間を生み出すことも可能です。
個人的に商品撮影のテクニック集などの記事を読んでいて疑問に感じるのは、必要かどうかも分からない照明機材や商品撮影キットを薦めて、“ありきたりな写真を撮る方法論”を紹介するばかりで、撮影側に考えさせることをしていない。
むしろ商品撮影キットでなければ撮れないかのような紹介は誤解を招きかねませんww
商品撮影において絶対に必要な機材は、写真を見るディスプレイとカメラだけであり、その他の機材は、人それぞれが、「必要と感じた時」、「撮りたい写真が明確化した時」に揃える部材であり、カメラ撮影関連の機材の充実が「良い商品写真」になるという保証はないということを知ってもらいたい。
カメラを含め撮影機材は、欲しい写真を撮るための「単なる道具」です。
商品撮影に持っていて損はない機材
おまけとしまして、商品撮影の撮影現場でプロ・アマ問わず大人気の撮影機材(用品)があります。
それは、「グレーカード」です。
機能としてはホワイトバランス(色温度)の精度を上げるもので、類似製品にカラーチェッカーなどもありますが、まずは商品撮影を行う前に「グレーカード」を使って、カメラ側に「正確な色のバランス」を記憶させると作業効率は上がります。
ホワイトバランス(色温度)のサポート用品
ホワイトバランスは後からパソコンで調整すれば良いという風潮もありますが、人間の記憶や視覚は現時点で見ている環境にすぐに左右されてしまう曖昧なものですので、感覚的に「あの時の照明はこんな感じだから多分こんなホワイトバランスでOKだ!」なんていう適当な決め方はせずに、現場で記録したホワイトバランスやカラーチェックをした情報を基準に色温度や彩度を追い込むことをオススメします。
商品写真を成功させる第一歩は、「正確な色の再現」です。
撮影テクニックやアレンジは、こうした基本的な作業が確実にできる環境やスキルが身についた後に実践するべきものであり、小手先の照明機材や撮影キットに頼ったテクニックだけを真似しても商品撮影の基礎となる色の再現性が未熟であれば趣味の写真の領域を出ません。
初めて商品撮影にチェレンジする人が必要になる機材とは、写真撮影が上手くなるテクニックや綺麗な演出をすることではなく、消費者に向けて正確な情報として商品写真を仕上げて掲載する環境づくりを優先すべきだと考えます。
余談ですが、これは撮影スタジオを行う代行業者にも言えることですねww
適当なモニター環境で写真を仕上げていると同業者に笑われてしまいますよん♪