業界最高クラス!、最高のクオリティをお約束します!
自社サイト上での“とある企業のキャッチコピー”
ネットショップ向けの商品撮影サービスに関しての評価について、私は自分のサイト上で、こういった文言を使用することが好きになれません。
写真というのは「正解のないクリエイティブな作業」です。
業界最高クラスという言葉を商品写真を提供する側が、自己評価として掲載するのは実に滑稽であり、裏を返せば、商品撮影サービスの目的である「顧客満足度」よりも「自社評価を優先する」ということの証明でもある。
商品写真の評価は、依頼元が納品された写真をネット通販で使用し、結果が出た時に他者から評価・判断されるべきものであり、カメラマンとしての経験上、「自ら最高の写真を撮ってる」と勘違いしているのは、1,2年の経験しかないバイトカメラマンの思考に似ている気がしてならない。
個人的な意見としては、商品撮影は回数や年数を積むほど、経験値を蓄積することはできるが、
「自分が最高の商品写真を撮っている」
と、自負したことはなく、毎回「もっと上手くなりたい」と考えてしまうのは性格の問題なのでしょうか・・。
反省しながらも依頼して頂く仕事への姿勢を表現するのであれば、「クライアントが満足してもらえる写真」を撮リ続けるだけである。
自信のない表現になりますが、商品撮影サービスの看板を掲げていますので、「一定のレベルの商品写真」を撮ることは当然であり、依頼先ごとに試行錯誤をしているのは、サービス開始当初から変わらない心境でもあります。
ネット上での宣伝文句は「何を根拠に表現されているのか?」が不明瞭な部分があるのは事実であり、写真撮影サービスの業界のことは一般の人は分からない事も多いはずです。
今回は、撮影技術やテクニックではなく、商品撮影サービスを行う業者の本質について見解を述べたいと思います。
撮影業者が使う最高クラスの意味
最高の写真、ハイクオリティな商品写真!
先述したように、私はこうした言葉や表現が好きではありません。
撮影業者が使う「業界最高クラスの商品撮影サービス」ってなんでしょう?
一人のカメラマンとして、自分より素晴らしい写真を撮る先人やカメラマン仲間は確実に存在します。
例えば、そうした自分より秀でたスキルや表現力を持つ写真家やカメラマンを認知している状況で、「私が最高クラスの写真を撮ることができる人間だ!」なんていう横柄な表現を自社が運営するサイトで公表する勇気は私にはありません。
何を基準に写真力を判断するのか?
物事の見方は、「置かれている状況」を冷静に判断することから始まります。
例えば、私が学生ばかりのアマチュア写真部の集まりに参加したとして、業務としての実績や撮影経験の多さなどを考慮して「自分を評価」するのであれあば、その集団の中では、「最高クラスの写真を撮る人間」なのかもしれません。
しかし、そこには「そこに集まった学生(アマ)の集まりの中では」という何とも独りよがりな前提があります。
安易に撮影業者が「業界最高クラス」という言葉を使い、サンプル画像を見てみれば、“井の中の蛙”というキーワードを連想してしまう事例もあります。
商品写真の事、さらに言えば写真のことが分からないお客様を対象に商品写真を提供している“大前提”を忘れ、「ストロボ使うと綺麗ですね!」とか「やっぱりプロは違う」と社交辞令を真に受けて、その言葉を鵜呑みにして自己評価をすると、「業界最高クラス」という言葉を使って宣伝してしまうお粗末な結果になるのかもしれない。
本当に業界最高クラスの写真を撮っている撮影業者は、自社発信ではなく、同業者からの評価シグナルとして「あのスタジオは、表現力のある良い写真を撮る」と評価されているはずです。
では業界最高クラスの品質という言葉は、すべての業界で使用できない言葉かと問われれば、そうではありません。
ISOなどの品質基準をクリアしているなどの企業は外部評価により認定された品質やサービスであり、利用者にとっては意味のある情報提示になります。
しかし商品撮影サービスを行う業者には、「基準を明確化する外部組織」は存在しないため、「自称○○」という図式が成立してしまうことは残念です。
撮影実績があると言っても、納品先の心情や評価までは分かりませんしね。
商品写真の分野において、「業界最高クラス」、「圧倒的クオリティ」と称される文言は、「誰が何を基準に評価したものなのか?」を少し立ち止まって検討することは大切であり、本音で話し合える撮影業者なのかを見極める1つのポイントなのかもしれません。
広告写真撮影の相場から実現できないのは明白
では、少し具体的に写真撮影の相場からみて、現在ネット上で氾濫している「業界最高クラス」を名乗る業者のサービスが実現可能なのかを考えていきましょう。
仮にA社の撮影サービスサイトで「最高のモデル写真で商品価値を高めます!」と書いてあったとします。
撮影料金は、モデル料金を含め、10,000円という価格設定。
この表示だけを見て、「低価格でモデル写真が手に入る」と感じた人は、ある程度ネット向けのモデル撮影の相場をご存知の方かもしれません。
しかし、同じ文言を見て、撮影料金1万円という価格が高く感じ、「これだけ料金を支払うのだから最高のモデル写真がゲットできる!」と感じた人は、きっと納品された画像を見て、肩を落としてしまうかもしれません。
では、最高のモデル写真で商品価値を高めるべく、最低の予算設定とはどういうものなのかを見ていきましょう。
まずはモデルのランクを考えます。
ネット向け商品撮影サービスに起用されるモデルは、「モデル事務所の2~3軍」、「アルバイトモデル」がほとんどです。
仮にアパレル商品で最高レベルの商品写真に近づけるのであれば、「キチンとしたモデル事務所のモデル」を起用することが賢明ですが、そこをツッコむと、そもそも1万円という料金で撮影自体が成立しなくなりますので、とりあえず「モデルとして認めることができるレベルの体型&人材」を確保します。
そして、撮影に向けてのヘアメイク。
広告撮影の現場にバイトではない、正規のメイクスタッフの派遣相場は、1スタイルで1万5千円程度です・・・
これまた正規メイクスタッフを依頼した場合は、1万円では無理ですので、「モデルさんの自前メイク」とします。
ここまでの費用として、モデルさんの交通費と拘束時間2時間とヘアメイク依頼を含めると物凄く値切って7千円程度でしょうか・・
さらにここにカメラマンの人件費とスタジオ設備使用料金、商品撮影前の準備作業と現像作業に返送までの一連の作業を考慮していきます。
もうお分かりだと思いますが、予算1万円で、業界最高クラスのモデルでの商品撮影なんて無理なんですwww
要はネット向けに存在している低価格の予算で撮影業者として最高クラスだと感じることのできる写真に仕上げるのは至難の業となります。
しかし、現状の商品撮影サービスを行うサイトでは、平然と「業界最高クラス」と謳っている現状があります。
もちろん低価格で品質的に問題ない商品写真を納品してくれる業者も凄く稀に存在しますが、経験上そうした業者は自社の評価を誤ったりはしていないことを覚えておいていただきたい。
広告写真、本格的な商品撮影の実情や料金相場を知ることで、サービス提供サイトが「売りにしているもの」が見えてくることがあります。
単純に予算の問題だけではなく、安易に「最高の仕上がりの写真」という言葉を使う撮影スタジオを同業者はどう見ているのか・・・
例えるならば、「私って綺麗でしょ!」って自意識過剰の女性に自慢げに話しかけられた時のような微妙な感情を覚えてしまうのです。
利用者のレビューから見えた商品撮影サービスの実態
業界最高クラスの商品撮影サービスを提供している業者を利用した人の評価はどうなのか?
きっと想像する限りでは、「やはりプロの写真は凄い!」という評価に埋め尽くされているハズ!ですが・・現実は甘くはないようです。
某Rモールの商品撮影サービスを利用した人のレビューを読んでみると、高評価と同数程度のこういった書き込みがありました。
プロにお願いしたのに事前に連絡がない&撮影ミスが多かった事が残念。
何度もやり直しをすることになり、結果希望の写真にならなかった。
商品撮影なのに、商品が白飛びしてしまって見えない!
説明写真として使えるレベルではない。
現場の作業に明らかなミスがあった!
服もシワクチャで、ボタンが外れた箇所をセロテープで留められた!
二度と利用したくない。
一応そのままのレビュー内容を掲載すると、もっと過激な表現でしたのでマイルドに修正しています・・
なぜ、「業界最高クラスの商品撮影サービス」を謳う某撮影業者で、このようなレビュー結果になってしまったのか。
業者側を擁護すれば、「低価格の範囲内で結果を出そうとした努力」は認めるべきですが、お客様A~Cのレビュー内容には「ある共通する叫び」が存在します。
それは、すべて「撮影の前段階で解決できること」で、お怒りになっているという点です。
お客様Aの場合は、「きっとやってくれるだろう」と考えていたことが履行されていない、コミュニケーション不足による商品写真の仕上がりイメージの相違です。
続いてお客様Bの場合は、撮影セッティングを商品に合わせて変更する余裕が、スタジオワークに組み込まれていないことを意味しています。
低価格化をベースに撮影作業を効率よくスピーディに進めるには、「常時定位置のセッティング」でレーン作業で行うことや、経験の少ないアルバイトカメラマンを起用することです。
商品説明画像において、「白飛び、黒つぶれ」などで伝えるべき素材感が損なわれる結果が撮影現場で見つかった時は、通常ならライティングの見直しなど何らかの対処をするのがプロの仕事であり、そこに見え隠れするのは、撮影した画像を現場で都度確認していない手抜き作業があるのでは?と疑ってしまいます。
またアパレル商品の依頼をしたであろうお客様Cの場合は、「撮影前の準備不足」これに尽きます。
当サイトでも商品撮影の作業には「省略してはいけない作業項目がある」と何度も書いておりますが、これは典型的な例だと言えます。
撮影前にキチンと商品をチェックし、アパレルであればハンガー掛けして、商品の状態を事前にチェックするべきです。
たったそれだけの手間を省いたことで、撮影直前に「服のシワ」が目立っていても放置してしまったり、ボタンが外れていても「仮縫製」も行わずにお粗末な対処で現場ワークを進めてしまう。
これで「業界最高クラスの商品撮影サービス」と謳うのは、自己満足の何ものでもない気がしてしまいます。
撮影業務で信頼を勝ち取ってきたスタジオのほとんどは、「絶対に省略しない作業項目」であり、業界自体にこうした依頼者を失望させる仕事をしている実態があることは非常に残念です。
逆にこの商品撮影サービスを提供している業者への好意的な評価コメントの多くが、「安くて良かった」という言葉が並んでいる。
つまり「安いことが正義」、料金的なメリットしかないという言葉ばかりです。
世の中には、撮影を代行してくれればOKという低料金の撮影サービスを求める依頼者も確かに存在します。
ある意味ではニーズに対応した商品撮影サービスとも言えますが、安さばかりを追求した商品写真を掲載して運営しているネットショップの将来を見渡せば、既にネット通販業界はそうしたショップが淘汰されている現状にも目を向けるべきかもしれません。
撮影代行業者が考えるべき商品写真との向き合い方
写真を依頼してくれる顧客数を増やすこと。
商品撮影サービスサイトを運営・提供している撮影業者にとっては、「クライントを増やす=売上を上げる」、この事自体は経営という観点から見れば間違ってはいません。
撮影業務を代行することで対価を頂く、依頼元はプロに外注することで手間のかかる作業の削減や商品写真の品質を保つことができ、両者はWin-Winの関係になることが理想です。
依頼元は当然、少しでも安く高品質な商品写真を求めるでしょう。
対して商品写真を提供する業者が考えるべきは、
「プロでなければ撮れない写真と作業を追求する」
これを前提に撮影料金を決め、「安さと品質のバランス」を常に意識しておくことだと思います。
商品撮影サービスの業界は大手企業の参入に伴い、10年前と比べて撮影単価は下落傾向にあります。
しかし、大手であっても依頼元の増加とともに経験のある正規カメラマンの雇用・確保は難しいのも事実です。
カメラマンの求人情報を見れば分かるように、あの大手撮影サービスを展開する企業も撮影業務をバイト任せにする現状も増えています。
企業側が低価格の撮影料金に漕ぎ出せば、当然カメラマンの報酬も減ります。
スキルのあるカメラマンであれば、安い賃金で納得のいかない写真を量産するのであれば、企業の専属カメラマンのポジションに拘る必要もなく、フリーランスの道も考えるでしょう。
写真はカメラのシャッターを切れば誰でも撮影できます。
商品写真の撮影代行を頼むお客様が求めているのは、
誰でもいいから撮影をして欲しいのか?
それともプロの業者(カメラマン)だから撮影をして欲しいのか?
サービスを提供する側もそうした「クライアントの真意」を考えるべきではと感じます。
商品撮影サービスを行うプロの撮影業者としての価値判断が「料金が安い」と言われるのは、商品写真を評価されたこととイコールではありません。
要は、その商品写真が倍の価格でも撮って欲しいと感じるかで判断されるべきなのでは・・
撮影スタジオが評価される基準は、「価格よりも写真での評価」であって欲しいと願います。
写真にこだわる業者でなければ、撮影を生業にしている意味が無いと思いませんか?
まとめ:最高クラスだと謳う商品撮影サービスは信用しない
商品撮影サービスを価格で選ぶか、写真力で選ぶかは依頼元に委ねられます。
しかし、写真という分野は、実際に撮ってもらわないと「価格と写真品質の価値」を判断することは難しいのも事実です。
本記事では撮影業者の姿勢として、サービスサイト上での文言に着目し、見解を述べてきましたが、初めて商品撮影を外注に出す際のヒントになるのかもしれません。
オーダー数の多さや低い撮影料金という宣伝項目だけでは判断できないことが、サイト毎の文字表現に隠れていることもあります。
依頼主が「撮影料金が安い写真が最高のサービス」と考えることも否定はしません。
ただ1つ言えることは、「低価格」で業界最高クラスの商品写真を入手できる方法は無いということです。
私は物撮りジャンルとして、ライバルだと認識しているのはレーン作業で行う撮影業者ではなく、商品写真に真剣に取り組む同業者であり、そうした業者が増えることを切に願います。
きっとこの先も当サイトで「業界最高クラスの商品写真を提供できます!」なんていう過激な文言を使うことはないでしょう。
弊社の商品写真の価値は、今までご利用頂いたお客様が知っているはずです。