洋服撮影のテクニックは、ネットを探せばいくらでも自分で撮る方法を見つけることができます。
しかし、商品撮影サービスの仕事をしていると、自社で洋服を撮っていたけど、方向転換して弊社のような撮影業者に外注するネットショップも少なくありません。
洋服撮影を行うためのテクニックが書かれた記事や、動画サイトで撮影模様も確認して、洋服を撮るために必要な撮影機材も揃えたにも関わらず、弊社の商品撮影サービスを利用することにしたのはなぜでしょうか?
前向きに考えれば、自社で洋服撮影を行い、売上が上がったことにより外注費用の確保できるようになったとも言えますが、残念ながら、現状のサイト構成や商品写真を拝見すると、自社での洋服撮影を諦めた理由としては、少々後ろ向きなケースもあります。
洋服撮影には、モデル、トルソー(マネキン)、吊るし、ピン留め、平置きなどの撮影方法にプラスして、背景アレンジや、ライティング構成などによって、組み合わせは無限に広がり、ネット界隈で出回ってる「洋服撮影のテクニック」は、商品撮影の入り口を部分の情報を見ているだけに過ぎません。
また、ネット上のテクニック記事の信憑性に関しては、以前にも少し触れましたが、「商品撮影を行ったこと無いライター」による記事が多く存在していたり、洋服撮影のテクニックを学ぼうとしているのに、ぬいぐるみなどサイズ感の違う商品の撮影術を勉強してしまったり、自社で行いたい撮影内容と着地点が錯綜するケースも多くあります。
弊社が撮影テクニックを公開しないのは、本質を突いていない情報を流すことに抵抗があるのはもちろんですが、撮影業者が、テクニック集と称して、自社撮影を推進するような記事を書くことに疑問を感じます。
例えば、洋服撮影のテクニックを学べば、自社撮影することで費用も安価に済ませることができ、撮りたい時に作業ができるので効率UPという撮影機材を売りたい業者の甘い言葉を信じてしまい、機材等の費用を投じた挙げ句に、意外と時間を要してしまう作業と、データ整理や準備の手間に埋もれて、本業のショップ運営に専念できない状況を無視した情報提供は、私なら心が痛むのです。
今回の記事では、洋服撮影のテクニックは公開しませんが、商品写真として洋服を撮るということはどういうことなのか?、撮影業者として行っている撮影時の作業内容をご紹介しながら、もし自社で行う場合に、費用対効果に見合ったものなのかを検討するキッカケにして頂ければと思います。
洋服撮影はテクニックより準備が大事
洋服撮影に限らず、商品撮影は準備が8割だと考えるの一般的ですが、個人的には9割以上を占めていると考えています。
例えば、100着の洋服がネットショップから撮影用として箱詰め状態で到着し、何も準備をしないまま、箱から出し、先方の指示内容を確認しながら撮り進めた場合よりも、当日開封ではなく、事前に開封チェックし、撮影順番などの進行を詰めた撮影では、圧倒的に撮影に要する時間が短縮されるだけではなく、ミスの防止やスタッフ集中力も変わります。
洋服撮影では、よくモデル撮影を推奨する業者も多いのですが、他社と比べてモデル費用が高い場合は、「なぜ高いのか?」を考えみることも大切です。
単純にクオリティの高いモデルが起用できるので撮影料金が高いという理由なら問題はないのですが、モデル撮影を扱う業者の中には、「非効率な撮影作業」を行っているため、業者都合で、モデルの拘束時間が長くなり人件費がかかっていることもあります。
同じ10着の着替えを行うにしても、髪型や着替える工数などを事前に決めた撮影プランと、何も事前準備がなく、衣装確認もしないので、指示コーディネートにある、「スカートは着回しができる撮影順」に気づかず、とにかく10着分の着替えをモデルに強いるような進行では、モデルの拘束時間も変わってしまうので、割高になる傾向にあります。
洋服撮影の準備について、「服のシワ取り」だとか、間接的な部分が語られることが多いのですが、撮影準備というのは、クライアントの撮影費用にも影響する部分です。
時間制の撮影料金で、撮影直前にだらだらと作業項目を確認しているような業者に対して支払う費用と、事前に進行表と撮影衣装等が揃っている状況での撮影料金、依頼者の立場になれば、「適正価格で効果を得たい」と考えるのが普通だと思います。
撮影準備不足の現場では、「とりあえず」とか「一旦考えよう」、「今日は無理か・・」などマイナスな言葉が飛び交うことが多いのに対して、撮影準備ができており、スタッフ間でゴールが見えている現場では、自然と笑顔と活気に満ちたスムーズな作業が行われる。
仕上がった商品写真は同じでも、撮影までのプロセスが円滑に行われない業者は、「商品撮影が下手」とも言えます。
料金だけでは見えてこない、商品撮影における準備の大切さを理解して頂けたらと思います。
洋服撮影はライティングで変化する
洋服撮影においてライティング(照明の当て方)は、質感や色を演出する上で非常に重要な要素になります。
前章で「撮影準備」の重要性触れたのも、9割の準備、そして残りの1割で、「商品写真の決め手」となるライティングに関する作業に集中するべきだからです。
もちろん、事前にどのようなライティングで商品撮影を行うかを決めていきますが、洋服撮影は「現場で気付くこと」が結構あります。
例えば、ライティングAという設定で撮影予定の商品を撮ってみたら、生地の繊細さが潰れてしまうなどの理由で、Bライティングに変更する。
このように1回分の撮影予定商品をライティング毎にグループ分けし、微妙なライトの照度や位置の修正を考えながら作業をすることがあります。
撮影予定の洋服をライティング毎にグループ分けする。
グループ分け自体も撮影当日に流れで行うのではなく、本来Aライティングで行う予定だったものをB設定に変更するといった微調整であり、ライティングパターンの予想と準備ができているから、洋服の素材や写真としての仕上がり具合に神経を使うことができます。
こうしたライティングによるグループ分けは、商品撮影を行う業者であれば励行しているはずですが、洋服撮影のテクニックとしてのライティング方法は、「素材の活かし方」など、見る人の印象を良くする写真の撮り方が多く紹介されています。
ネットショップで扱う商品の撮影には、主に「商品イメージを向上させる写真」と「商品を正確に伝える写真」に分類されると考えています。
洋服撮影のライティングを、商品撮影の目的別に考えるのであれば、「イメージと説明用」で変更するのは当然です。
撮影業者であれば、それぞれの目的に合わせたライティングパターンをいくつも持っていることが理想ですが、はじめての自社で商品撮影を行う場合は、基本となるライティングを知ることも大事です。
洋服の商品カテゴリーに合わせたライティングを考慮し、実際に撮影をしながらも調整をしていく。
洋服撮影は、ライティングで印象が大きく変化するのが特徴であり、個人的にはネット情報を見ながら自社撮影にチャレンジする時間と労力を考えると、コスパが良い作業だとは思いません(写真が好きなら別ですw)
洋服の商品撮影は経験が大事
普段見ている洋服を写真で撮る。
商品撮影を生業とする前の私は、袋詰された新品の洋服を取り出し、商品写真として成立させるまでにかかる手間も考えていなかった頃がありました。
撮影業者あるあるですが、たまにお客さんから「これ1着だから軽く撮っておいて」と言われて、軽く撮れない写真をリクエストされるパターン・・・
洋服撮影というのは撮ってみて初めて気付くことが多くあります。
例えば、ハンガー掛けの状態でちゃんとしていた洋服も、トルソーに着せてみると、個体差なのか「形状に違和感」を感じたり、
左右で生地の丈が揃っていなかったりなど、袋に入った状態や、一見しただけでは分からない問題があったりしますw
洋服撮影の経験が多くある業者であれば、「こういう時はこうする!」という現場で対処できる経験値や処理パターンが多いので、余程のことが無い限り、撮影が止まるなんていうことはありません。
要は、商品撮影は経験も大事なのですが、撮影作業に対するメンタル面での姿勢も大事だということです。
例えば、商品撮影のことを知らなかった“アノ頃の私”の場合は、経験が無いために「簡単に撮れる」と想像してしまう自分がいましたが、実際に初めて洋服の商品撮影を行った時に気付かされたのは、「経験と事前準備の重要性」でした。
趣味で作った洋服を売るのであれば、商品撮影も趣味として、自分でチャレンジしながら商品の制作から撮影・販売までを楽しむのも良いと思います。
しかし、ネットショップを構えて「本格的に洋服を売る」というのであれば、訪れる消費者が掲載写真を信用して買える程度の写真品質をキープしなければなりません。
無造作に氾濫している洋服撮影のテクニックは、写真やカメラの基礎的な知識と経験から語られているものが多く、初めてカメラを触る人に向けたテクニックではありません。
なぜ商品撮影サービスを行う業者が昔から存在しているのか?
端的に申し上げれば、洋服の商品撮影は経験が大事であり、撮影の核心の部分は、ネット検索では出てこないということです。