ネットショップが商品撮影をして掲載する商品写真の役割は、説明用の画像またはシチュエーション写真などのイメージ画像の2通りを視野に入れた撮影や運用をしていると思います。
こうした普段の作業として当たり前だと感じている商品撮影やページ制作の工程が、誰から教わったのかの記憶すらない、“ネットショップはこうしなければならない”という、単なる固定概念だったとしたら・・
例えば、洋服のモデル撮影は、全身、膝上を中心にサイドやバック側も撮りましょう!
こうした商品ページの構成で定番であり、絶対必要だと思っている商品写真が消費者が必要としていないと仮定したら、何を掲載したら良いのか戸惑う運営者もいるかもしれません。
ネットショップ向けに商品撮影を行う業者の中には、古くから写真館として商売をしてきた老舗と呼ばれるスタジオも多く参入しており、先人の撮影技術は、やはり個人的にも感動すら覚えることがあります。
しかし、そうした写真を撮る技術を駆使しても、「売れない商品写真」があることをご存知でしょうか?
その決定的な違いは、ネットショップ上で、「見せる商品写真」と「魅せる商品写真」が混在しているか否かで、同じ商品をネット上で販売しても商品の売上は大きく変動します。
冒頭で触れた意味合いは、固定概念が強くなり過ぎると「見せるだけの写真」になる傾向があるということ。
誤解のないように付け加えますが、写真だけでネットショップ全体を考えず、サイト構成やページ対策を含めたバランスを検討しましょう。
では「見せると魅せる」、この商品写真の違いは何でしょう?
ネット上の記事の多くは、この違いを語る時に商品撮影のテクニックを論点に解説しますが、個人的には「撮り方」で何かが変わるのではなく、デザイン上の後処理でも十分対応ができるので、撮影段階のテクニックだけとは考えてはおりません。
先述したように老舗の撮影スタジオは「撮影をするプロとしてのテクニック」は既に持っています。
2つの言葉に違いがあるとすれば、ネットショップの時流を捉えているか、いないのかの差であり、ネットショップの運営者が今すぐできる対策だとも感じています。
膨大な撮影費用や今までの商品写真を無駄にすること無く、今すぐ始められる商品写真の “みせかた” について今回は話題にしていこうと思います。
ネットショップと商品撮影の固定概念
冒頭の文章で、ネットショップは、商品ページ制作時に、説明用とイメージ用の商品写真を掲載することが必須条件だという固定概念を持っている傾向があると書きましたが、なぜ今の商品撮影のテンプレートのようなものが出来上がったのかを考えたことはありますか?
そもそもネットショップと呼ばれる通販サイトが誕生したのは、1997年2月に、後の楽天株式会社になる、株式会社エム・ディー・エムが設立され、今でも大人気の楽天市場が日本でのネットショップ開始のきっかけだとされています。
2000年台になるとヤフーショッピングやアマゾンなどの大型通販サイトの普及に伴い「ネットショップで買物する」という購入方法が世間に普及しました。
また同時に大手モールに出店をしない、自社運営のECサイトも増え始め、「ネット通販は儲かる!」というネットショップ開業ラッシュが起こりプチバブルに突入します。
現在では大手モール、自社運営のネットショップ以外にも、オークション形式の出店などECサイトと呼ばれる業態は、成長しながら変化しています。
では、そうしたネットショップにおいて、今も昔も変わらないものといえば、商品撮影(商品写真)です。
商品動画の普及も目立つようになってきましたが、20年以上経った今でもネット通販における基本的な判断材料として消費者は、「商品写真」という視覚情報を頼りにしています。
最終的に購入のきっかけになるものが写真であれば、商品撮影の役割は大きくなり、代行業者の乱立や商品撮影を自社で行うための機材やキット販売も行われるようになります。
商品写真を綺麗に仕上げることで、購買意欲を促す
これは間違ってはいませんが、もしも20年前と同じ固定概念だけで、商品撮影を行い、単純に販売用の画像を掲載するだけでは、生き残れない時代に入っていることに気づいていないとしたら、ヤバイですww
私が激安の商品撮影サービスなどの「撮るだけを目的」とした代行業者を避けるべきと考えているのは、「時代に合った撮影方法、掲載方法」とは呼べない部分があり、いわゆる「見せるだけの商品画像」だからです。
激安業者によくある商品写真として、モデル着用イメージを依頼しても、マネキンでも変わらないような、無表情なモデルがポーズを決め撮られた写真にどれだけ予算を費やしても、それなりの運営状況になってしまうでしょう。
こうした商品写真で満足するネットショップの傾向は、すでに一定の訪問者が呼び込めるサイトパワーがあり、無表情なモデル着用画像を並べても成立している、または単純に予算を最小限に抑えた「モデル着用写真」が欲しいネットショップだと予想されます。
果たして、“今” のネットショップ事情を考えて、同じ考えで数年先も通用するかと聞かれれば、微妙な印象を受けます。
綺麗な商品写真を撮り、掲載することは、既にどこのネットショップも行っており、今では「汚い商品写真」を探す方が難しいくらいです。
ではEC市場全体が綺麗な商品写真を並べる中で、差別化を図るにはどうしたらいいのか?
そのヒントになるのが、見せる商品写真と魅せる商品写真の使い分けです。
従来型のネットショップの商品撮影とは
まずネットショップが多く存在する楽天市場を見てみると、売れている商品写真は「魅せること」に成功しています。
検索エンジンとの兼ね合いもありますので断言はしませんが、売れているネットショップに対して販売が伸び悩んでいるショップは、商品を単純に見せているだけの傾向があります。
簡単な事例で申し上げると、同じ商品を扱う場合でも「商品全体を見せるだけの写真」と「商品の一部を大きく切り出して魅せる写真」とでは、消費者のクリック率が違うということです。
商品全体を見えないようにするのが正解ではなく、「消費者の目線を誘導する仕掛け」があるかないかという違いです。
従来の商品撮影では、商品画像を真ん中に配置して、商品を引き(全体)で見せる掲載方法に重点が置かれていましたが、目的の商品を検索して商品一覧が表示された時、撮ったまま全体像が表示される「日の丸写真(センター配置)」だけでは、消費者が詳細ページを開きたくなる目線と心理の誘導は生まれにくい状態と言えます。
綺麗さやキチンと撮られた商品写真にプラスする要素は、「詳細ページ」を見たくなる“きっかけ”です。
こう書くとモデル着用写真を撮影スタジオは勧めたりしますが、そこが重要ではなく、モデルを使わなくても閲覧者の感情に、「どんな商品なんだろう・・」、「ちょっと見てみようかな?」という心理的な揺さぶりがあれば大丈夫です。
使用目的の性質上、商品撮影サービスを利用するお客様の商品は、白い背景で撮ることが多くなりますが、業者が撮った写真をそのまま掲載しているなど、戦略的に運用できていないパターンもよく見受けられます。
効率化を求めたネットショップ運営の商品登録作業を優先し、撮影の段階で商品をセンターに配置、そのまま公開できるように縦横サイズを指定していくことも悪くはないですが、そうした画像は、全般的に「見せるだけの商品写真」と割り切って使うようにしましょう。
販売・運営側にとって作業効率が良い商品画像は、紹介用として掲載する商品写真として考えると、販売するための最低条件はクリアされていますが、ネットショップ業界全体を見渡してみると「綺麗・キチンとした商品写真」への対応は既にマストな条件であり、商品撮影した画像をそのまま掲載していく作業が、他社との差を生む、アドバンテージとなる事は考えにくい状況です。
消費者の心理として、キチンと撮られた商品写真であっても「目的のない画像」は、先入観として「無機質な写真」と感じ、売り手側の「人間らしさ」や「売り出したい商品へのアピール力」としては、弱いものになります。
なぜ商品画像を単純に並べただけの商品ページが多くなってしまうのか?
魅せるための商品写真を依頼する方法については、最後のまとめとしてネットショップの商品ページの制作手順を踏まえてご紹介します。
同じ商品を扱っていても売れるネットショップと売れないネットショップに違いが出るのは、商品写真を依頼する前の段階から「売り手の意思」が明確になっていることが大切であり、リピート購入者が多い、少ないの差にもなります。
商品撮影サービスを“今の時流”に合わせて上手く利用しているネットショップも存在します。
ネット通販黎明期から続く固定概念で作業をしているのか、または商品写真の魅せ方を知っているのかで、数年後も生き残るネットショップになるかどうかの可能性も変わります。
では従来型の商品撮影の活用術と、惚れてしまう商品写真の魅せ方の違いは何か?
商品撮影の業者の視点で、上手に商品写真を活用し、成功しているネットショップの事例を挙げながら紹介したいと思います。
惚れるネットショップの商品撮影での魅せ方
惚れるネットショップというと、奇抜なアイデアと商品撮影のテクニックを駆使しているように感じるかもしれませんが、全くそうではありません。
私が考える惚れるネットショップとは、「コンセプトがブレない」、でも消費者の目線に合わせて「ちょっと幸せな気分を感じさせる演出」をしているネットショップだと考えています。
注意したいのは、惚れるネットショップと流行のネットショップとは意味が異なります。
流行というのは、悪く言えば「一過性のもの」です。
固定客(リピーター)がつかないネットショップというのは、往々にして流行ばかりを追いかけているケースです。
例えば、売上を上げるコツという触れ込みで撮影業者からこんな言葉を見たり聞いたりしていませんか?
・商品写真はモデル着用イメージが訴追力があるので売れる。
・商品撮影の背景を変えると印象が変わって売れる。
・ライティングに変化をつけると売れる。
etc
どれも正解ですが、もはや流行りではなく都市伝説のジャンルのようで撮影上の具体策に欠けているため、撮影依頼をする側が大きく勘違いをする要素を含んでいます。
上記に挙げた例は、単なる撮影方法というだけで、業者の言われるがままに行っても商品が売れる保証などありません。
また、激安業者にアレンジを頼むと、ポージングとは程遠い“棒立ちモデル”が使われたり、商品カラーとの相性を無視した背景を提案されたりと逆効果になることもあるので注意が必要です。
惚れるネットショップというのは、業者主導ではなく、撮影側と依頼側で商品写真のコンセプトの共有ができており、依頼側の判断が絶対になります。
つまり撮影代行業者から言われるがままに撮った写真は、どれだけ綺麗に仕上げてもスタジオ任せの「見せる写真」の領域を出ないということです。
魅せる商品写真で勝負しているネットショップ。
では、実際に撮影業者の一人として、「このネットショップは惚れる!」と感じたサイトを紹介します。
商品撮影の業者も惚れるネットショップ
出典:北欧、暮らしの道具店
株式会社クラシコムが運営するネットショップは、「オリジナリティ」に溢れています。
オリジナリティと書くと、サイトデザインや商品写真だけに気を取られてしまいますが、それだけでは「惚れるネットショップ」にはなりません。
ご紹介したECサイトは、楽天市場など大手モールへの出店は行っていません。
一時期は、楽天市場へ出店していた時期もあったようですが、自社のスタイルを重視して、楽天市場での独特のスタイルや商品展開を「ナシと判断」し、自社が考える良いネットショップのスタイルを貫いたそうです。
では私が凄く共感できた「惚れるコンセプト」をご案内します。
一般的にネットショップの運営は、いかに競合ショップより早く商品を公開し目立つのか、また訪問者を逃さないように購入時には商品自体の価格や消費者への商品の配送の早さを競っていたりします。
それは1つのビジネスのやり方ですので、否定はしませんが、「北欧、暮らしの道具店」は、徹底的に「買い物をする楽しさ」に注目して商品ページを構成・提供しています。
そんな「北欧、暮らしの道具店」の戦略にはまりw、私も商品購入を何度もしていますが、ここには商品を買うまでの楽しさがあります。
誤解を恐れず表現すると、私が楽天市場やヤフーショッピングを利用する時は、購入する商品が決まっている状況で、正直なところ値段が一番安い&商品写真を見ながら、無難なモノを買うという行動が素直な購入スタイルです。
それはそれで効率的で良いのですが、「北欧、暮らしの道具店」で商品を買う時は、じっくり商品説明を読んでしまいます。
このブログのように大量のテキスト量があるわけでなく、サラッと読める商品説明と文量なのですが、実用性とヒントをくれる説明が的確に書かれており、説明の補足と共に購買欲を後押しをする「魅せる商品写真」が盛り込まれています。
インテリアをはじめ、ファッションアイテムの商品ページでも「嫌味のないモデル画像」とインスタでも使えそうな絶妙なトリミング画像を使用して、「1つのストーリー」を商品ごとに完結させています。
スタッフ着用のコラム記事などのコンテンツも充実しており細部の手抜きがなく、どのページを見てもネット通販サイトですが、○○ランキング1位入賞など、大袈裟に宣伝するような「買ってくれアピール」はしていません。
結果として、「いい商品を自分が見つけた」という感覚になり、思わずポチってしまう・・
皆さんがどう感じるかは分かりませんが、「北欧、暮らしの道具店」を、じっくり閲覧していくと、ネットショップの運営方法の1つとして学べる要素は多く、派手な演出や装飾は必要がなく、消費者目線に立ってキチンとした商品写真を効果的に使うことで、魅せる商品写真としての存在感を漂わせていくことは可能だと教えてくれる。
商品撮影を行う業者からすれば、綺麗に整頓された商品画像は見ていて心地よい気分になる。
逆に、どこぞの撮影業者のモデルがAショップでもBショップでも登場してくると、どこのネットショップを巡回しているのか迷うことになり、結局そのサイトを離脱することはよくある行動パターンです。
人気(ひとけ)のあるネットショップは、モデルが何人も登場するとか、キャンペーンを派手に行うということではなく、そのネットショップ独特の雰囲気を感じるかだと思います。
もちろん、ネットショップ毎のターゲット層や出店先とのバランスもありますが、忘れてはならない事は、売るためだけの商品ページを量産するのではなく、
消費者が買って良かったと感じる商品ページの構成を目指すべきです!
もちろん商売ですから売るためのページですが、同じ商品を買ったとしても満足度としては雲泥の差が出るのは明らかです。
では、魅せる商品写真を効果的に配置するために、商品撮影サービスをどのように利用するべきかを、まとめてみます。
魅せる商品写真をネットショップに採用する
どんな商品写真が欲しいですか?
弊社の商品撮影サービスを利用するお客様にこんな質問をすることがあります。
漠然とした質問ですが、この質問をして具体的にアレコレと希望が出てくるお客様は、既に商品ページの構成が出来上がっているのだと判断できます。
もちろん、どんな商品写真にするかは、ヒヤリング後にまとめていくのですが、同じ質問をして圧倒的に多い撮影希望のパターンは、前と横と後ろとポイントをお願いします!という撮影カットの指示です。
ではなぜこういう指示になってしまうのか?
理由は2つあります。
1つは、世の中のネットショップのほとんどが、こうしたバリエーションで撮られているので、それがスタンダードであり、それ以上のことは考えたこともない。
もう1つは、商品ページは商品写真が納品されてから作るので、撮影を依頼する段階で詳しいイメージやカット割りの指示が分からない。
商品撮影サービスを利用する段階の指示が簡素化してしまうのは、大体こんなところではないでしょうか?
これが悪いというわけではありませんが、このやり取りで「魅せる写真が生まれる要素」は、ゼロに等しいですよねww
魅せる商品写真を量産するのであれば、商品ページ制作の順番を変えて考えてみることも必要です。
写真ができてから商品ページの制作に着手するのではなく、まずは商品の説明部分からページ制作を開始していき、大枠のページの構成が出来てから必要になる商品写真を撮影業者に依頼する。
もちろん商品ページを先に制作していけば、商品写真として、使用方法などを解説するイメージカットが増えてしまうことはありますが、最終的には自社のネットショップをどう感じてもらいたいかの判断です。
前項で例に挙げた「北欧、暮らしの道具店」は、必要なものには手を抜かない熱量がウリだと思います。
それが丁寧な商品紹介ページになり、オリジナリティを生んでいます。
ネットショップが採用すべき魅せる商品写真とは、消費者目線で必要性のある商品画像を並べることです。
撮影料金だけを気にした商品撮影サービスの利用は、必要のある商品画像を省略してしまうこともあります。
撮影を依頼する前に商品ページの制作をすることで、文字による説明では足りない部分(商品写真で補足すべきパート)が
見えてきます。
必要となる撮影カットや商品のアプローチの仕方は、同じ商品を扱っていたとしても売る人間が変われば、解釈や提案内容も変化するのが自然ですが、安易に商品ページの制作代行業者に依頼してしまうことで、「個性のないSEOだけに注目したような売り方」になり、ネットショップの多くは、プロに何もかも任せれば安心という、従来型の固定概念から抜け出せていない印象もあります。
御社のネットショップは、商品写真で画像を見せたいですか?それとも商品を魅せたいですか?