商品撮影を成功させるノウハウ10選をご紹介します。
ネットショップ向けの商品写真の撮影方法やテクニック集では、手軽に簡単に「綺麗な写真」を撮るためのコツや商品写真をの見せ方に関するハウツーが掲載されていますが、実際に撮影にチャレンジし時に、撮影作業に迷いが生じてしまうことがあると思います。
初心者の方のみならず、商品撮影を成功させるためのノウハウとは何か?
今回は商品写真を撮るための準備・機材・撮影・仕上げ編に分類し、基本的な撮影手順を絞り、継続して商品撮影に取り組むためのノウハウを解説していきます。
商品撮影にはカメラ選びや撮るためのコツも重要ですが、本当にスタートアップとして作業効率やストレスフリーな撮影に欠かせない事は、シャッターを切る前段階にあります!
商品撮影を成功させるノウハウ|準備編
商品撮影を成功させるには、まず撮影という作業を大きな枠組みで捉えることが大切です。
一般に抱く商品撮影のイメージは、撮影者がカメラを握り、シャッターを切っている場面を想像しますが、それは実際の作業工程としては仕上げの段階となります。
ネット上では商品撮影の準備編として紹介した場合、用途に適したカメラの種類のことや照明機材などに注視していますが、はじめて商品撮影に挑戦して成功させるための準備として、機材選びは撮影に慣れてから検討しても十分に間に合う分野です。
撮影スタジオスタッフが日々どのようなことを考えながら撮影に取り組んでいるのかを知って頂くことで、一般の人にも役立つ商品撮影のノウハウがあると思います。
それでは早速、商品写真を撮るための準備編からご紹介します。
1.商品写真には説明用とイメージ写真がある
商品写真を分かりやすく2つにカテゴリー分けすると「説明用の商品写真」と「イメージ写真」とに分類されます。
ネットショップに掲載されている商品写真で「綺麗!」、「売れそう!」と皆さんが感じるのは、「イメージ写真」を見た時だと思います。
心理的に良いと感じる商品イメージの写真には、いくつかの共通点があります。
例えば、商品のポイントを的確に表現していることや、印象効果を上げるライティングが施されていること、そして、意外とカメラマンが意識しているのは、消費者が日常的に目にしているであろう「素敵写真の基準」です。
これは皆さんが無意識のうちに目にしている商品写真、例えばカフェに行った時にメニューに掲載されている写真、アパレルであればファッション雑誌の巻頭ページに登場するような印象的な写真、きっと誰でも「綺麗な商品写真」を自分なりにイメージができて、パッと連想してしまう写真があるはずです。
撮影業務に従事しているカメラマンは、毎日の生活の中で積極的に色々な写真を見るように心掛けています。
「写真をたくさん見る」という行動の中で、自分の中の「良い写真と悪い写真」の判断ができるようになります。
最近では手軽にネット検索しながら、スマホのスクリーンショット機能で、琴線に触れる写真はアーカイブしていきながら、撮影の参考資料として準備することもあります。
イメージ写真を撮るノウハウを紹介する記事では、テクニックに関する内容が先行しがちですが、まず大切なことは、「良い写真の基準」を自分の中でしっかりイメージできるようになると目標を設定しやすくなります。
続いて、「説明用の商品写真」ですが、これはイメージ写真とは異なります。
商品の色合いの正確さや脚色を控えた写真となりますので、商品部分が白飛びしていたり、暗くなり過ぎたりするのはNGとなります。
ネットショップ掲載の商品写真で違和感を感じるのは、「イメージ用途なのか説明用途なのか不明な写真」です。
一見すれば綺麗な写真でも、コントラストが強調され過ぎていたり、彩度にバラツキのある写真は、商品購入を考えている消費者にとって、「正解の写真」が判断できず迷ってしまいます。
商品撮影を行う前に、「イメージ用か説明用」どちらの写真が必要なのかを明確にしておくことは、撮影前の準備として欠かせないことであり、目的がはっきりしていれば、撮影業者に依頼する際も「撮影意図」を伝え易くなります。
2.撮影カットと商品撮影の順番
商品撮影サービスを利用した経験がある場合、撮影スタジオから「指示を仰ぎたい項目」、「必要なカット内容」について質問されたことがあると思います。
撮影業者によっては、サイト上に「撮影指示用のファイル」が用意され、撮影商品ごとに何枚の写真が必要か、どんなアングルで、どの部分を撮るのかを撮影指示書に記入するようにお願いされることがあります。
これは単に業者とクライアントの間で交わす確認書類ですが、自社で商品撮影を行う際にも撮影カットを明確化することは作業効率の向上に役立ちます。
例えば、何を撮影するかを決めないまま商品を並べて撮影カットを量産しても、「使わない写真」はずっと使わないでしょうし、前項で触れた「良い写真」がイメージできていないことにも繋がります。
また撮影カットに付随して、「撮影の進行順(順番)」を予め決めておくこともオススメです。
10点程度の少数の撮影であれば進行順にこだわる必要はありませんが、仮に商品ごとに背景や照明セッティングを変えたいと思っている場合は、「撮影の進行表」を作成しておくと便利です。
必要な撮影カットと進行の決め方のポイントをまとめておきますので、参考にして下さい。
Point1:商品ページで必要となる写真の上限数で撮影カットの内容を決める
Point2:商品のサイズやコーディネート毎に分類する
例えば、ボトムスAを中心としたコディネートが複数存在する場合は、ボトムスAから展開される商品群をまとめて撮影するようにすれば、何回も同じ商品を成形したりする手間は省けます。
Point3:撮影所要時間を想定しておく
商品撮影は「正確さと集中力も大切」ですので、時間経過による焦りが出ないように適度に休憩を挟みながら進めることを覚えておきましょう。
必要な撮影カットや進行順を決めることは、円滑に作業を進める準備として大切です。
一般の人のみならず、撮影業者もこうした準備にかける手間を惜しんだり、届いた商品を開梱して、すぐに撮影作業に取り掛かることで、作業簡略化による撮影ミスや必須カットの撮り忘れが生じてしまうこと時間と労力を無駄にしているとも言えます。
商品撮影をする中で、撮影ミスや撮り忘れの防止には事前の準備が重要な役割を占めます。
綺麗な写真、売れる写真を目指す前にミスのない作業を優先することが大事です。
商品撮影を成功させるためのノウハウ|機材編
商品撮影を成功させるノウハウの機材編です。
ここでは撮影に使用する具体的なカメラの機種や設定方法などは記載していません!
理由としては、商品撮影を成功させるために機材を指定するということは、「撮影方法の押しつけ」にも繋がるので、個人的には好きではありません。
カメラに関して言えば、一般的にマニュアルモードでの撮影が可能で、標準的な機能を備えていれば大丈夫です。
カメラやレンズ機材による画質や解像度という点でも大判のポスター用の撮影などを考えていない限り、ネット掲載用の使用目的であれば、現在市販されているデジタル一眼レフカメラで、十分過ぎるスペックを持っています。
商品写真のみならず写真撮影においって神経を使うのは、物理的な機材ではなく「光」です。
商品撮影を成功させるためのノウハウの機材編では、写真に必要な光(ライト)をコントロールするために撮影場所や機材用品を整えていく方向で進めていきます。
大切なことは、撮りたい写真の目的に合わせた機材を最小限に揃えることです。
どれだけ高価で機能豊富な撮影機材を購入しても使いこなせなければ意味がありません。
3.撮影用の照明機材と光の質感
商品撮影に必要なものは「光」ということはご理解頂けたと思います。
撮影に使用する光、つまり照明には大きく分けて、「人工光と自然光」の2つがあり、いずれも「照明」という言葉でまとめられますが、それぞれの特徴を理解すると、自分の商品撮影にどちらが適しているかを判断することができます。
基本的に商品撮影を行う場合は「室内での作業」を想定していると思います。
ストロボやLEDや蛍光灯などの照明機材を使う場合は、意図的に光をコントロールすることができますが、室内に射し込む自然光を使う場合は、季節や天気、そして時間帯や壁紙の色や空間サイズによって自然光の光量や質感は変化していきます。
照明機材を購入する必要のない自然光を利用した撮影は、もっとも手軽に写真撮影ができるように感じますが、上記のような条件で変化する自然な光源ですので、「同じセッティングで撮影回数を継続する」には、環境の変化に注意する必要があります。
自然光を利用した商品撮影で初心者の方の失敗例としては、1回目の撮影は正午から撮影をスタートしたが、2回目は夕方から始まり、前回と同じ様にならないため、1回目と2回目の商品写真の仕上がりにバラツキが出た、いわゆる“自然光のいたずら”に悩まされるケースです。
対してストロボやLEDなどの照明機材は、基本的に自然光のような日照時間などに左右されることはなく、撮影をスタートできるので、業務の間で撮影をしたいネットショップにはオススメの照明機材です。
但し、室内でLEDや蛍光灯を使い常に同条件で撮影を行う時は、自然光の影響を受けないように遮光カーテンなどを準備するようにしましょう。
では撮影に使用する照明機材の種類について確認してみましょう。
◇自然光をコントロールする機材と用品
室内の自然光が入る場所で撮影を行う際には、場所によっては光の強弱、または自然光の光の質感に悩まされることがあります。
自然光をコントロールするための機材として「トレーシングペーパー」や「レフ板」があります。
トレーシングペーパーは、照明機材との組み合わせで使用範囲の広い撮影サポート用品ですが、自然光での撮影で使用する時には直射日光による「光や陰の出方が強過ぎる(硬い)」と感じる場合は、トレーシングペーパーを1枚加えるだけで、より自然で柔らかい光の演出が可能になります。
またレフ板の役割は、商品を撮影する際に、光が当たる反対側の暗くなる部分の明るさを補う「光を起こす・光を回す役割」と、余分な光をカットするという2通りの使用方法があります。
レフ板の種類として、白・銀・金・黒とレフ板にはカラー分けがありますが、まずは初心者の方は、「白レフと黒レフ」の2種類のレフ板を持っていれば大丈夫です。
トレーシングペーパー、レフ板ともに必ずしも撮影用の機材専門ショップで購入しなくても、ホームセンターや100円ショップなどでも購入・代用できる撮影用品なので、サイズや質感に合わせて適宜準備しましょう。
◇撮影用の照明機材と用品
撮影用の人工照明には様々な種類があり、その価格帯も幅広く市場に出回っています。
1度きりの撮影で小物を軽く撮る程度であれば、デスク用のスタンド照明を応用するのも1つの方法ですが、商品撮影にある程度の品質を求めるのであれば、撮影用の照明機材は揃えておいて損はないでしょう。
撮影用の照明機材の価格帯には大きな差があると書きましたが、選別の基準は、「照明機材に後から付けるアクセアリーの対応力」で決めるのも1つの購入のポイントになります。
例えば、照明機材本体で、光を柔らかくしたいなどの欲が出た時に、安価な照明機材にはアクセサリーの後付けが未対応だったりすることがあります。
国産や有名メーカーの照明機材は、撮影現場の経験から考えられた仕様になっている機材が多く、サードパーティ製の関連グッズも照明機材ごと買い換える必要なく使用できたりするので、利便性の高さも特徴です。
では初心者から中級者の方向けに商品撮影用に使われる照明機材の種類と特徴をご紹介します。
LED・蛍光灯による照明機材
LED照明は最近のスマホカメラの横側に設置されるなど馴染みのある撮影照明です。
特徴としては、光源の発色が安定しており、長時間点灯使用しても発熱も少なく使いやすい照明機材ではありますが、光の質としては直線的で硬質な照射がされますので、トレーシングペーパーなど光の拡散効果のあるグッズが必要になる場合があります。
対して蛍光灯による照明機材についてですが、現在ではあまり歓迎されない照明とも言えます。
理由としては、LED照明に比べ1つ分の光量が弱く、使用時間により光量の低下が激しい点や発色の安定性が低いこと、電源を入れてから色温度が安定するまでに時間が必要になる点が挙げられます。
プロの撮影現場でも使われているという記事もありますが、業務用途としての蛍光灯照明(定常光)とは家庭用の蛍光灯ではなくプロが使う蛍光灯は、写真撮影用ランプなどを指すことになります。
写真撮影用ランプは発色がよく、ランプ形状の種類も豊富で光の拡散効果があるタイプもありますが、ランプ寿命が短い点や発熱性も高いので取り扱いには注意が必要です。
ネット通販等で販売されている蛍光灯の照明機材は、「撮影用」とありますが、ある程度のサイズの商品撮影をするためには、光量を稼ぐために蛍光灯の灯数を増やす必要もあり、コスパも悪い印象がありますので、いわゆる定常光による照明機材を選ぶ際は、LED照明対応の機材を選択する事をオススメします。
ストロボ照明機材
商品撮影の照明機材の本命とも言える「ストロボ照明」ですが、これも種類がございます。
今回は初心者から中級者向けのストロボ照明機材とします。
紹介するストロボは大きく分けて2種類、「スピードライト」と「モノブロックストロボ」となります。
スピードライト
まずスピードライト(クリップ式ストロボ)と呼ばれる照明機材
ん?フラッシュとは違うの?というツッコミが出そうですが、一般的には、
スピードライト=フラッシュ=クリップオンストロボ=ちっこいフラッシュw
など、呼び方は様々ですが、簡単にまとめるとカメラ上部のホットシューと呼ばれる部分に装着できるようなストロボが、「スピードライト((クリップ式)」と覚えて下さい。
商品撮影でスピードライトを使う時は、カメラ本体に装着せず「カメラから離して使用するのが基本」となります。
理由としては、カメラ本体に装着したままだと「商品を照らす細かな照明アレンジ」が使えません。
カメラ本体に装着したままでも壁などにバウンス(反射)させる方法も紹介されていますが、バウンスさせるなら、カメラ本体から離して使いましょうw
スピードライトの特徴としては、コンパクトで場所を取らない、カメラ内臓のフラッシュに連動させられることでライティングの幅も広がります。
また乾電池で駆動するタイプが多い照明機材ですので出先の撮影でも扱い易いタイプになります。
スピードライトは、有名カメラメーカー純正のものは高価になりますが、商品撮影用にスピードライトを選ぶコツは、ガイドナンバー(GN:光が届く距離&強さ)で選ぶよりも、光量調節ができるタイプを優先して選ぶようにします。
商品撮影では比較的、撮影対象物との距離は近い場合が多いので、発光の強さや光が届く距離よりも「光量調節機能」に優れたタイプの方が、安価で使用用途が広がるなどの価値があります。
モノブロックストロボ
モノブロックストロボは、商品撮影用の照明機材としては、本格プロ仕様のイメージがありますが、実はそうではなく、家庭用のAC電源で使えるストロボ照明です。
形状や大きさから威圧感はありますが、モノブロックストロボはスピードライトに比べて光量調節のツマミなどのスイッチ類は簡素化されていますので、初心者の人でも扱いやすい照明機材です。
モノブロックタイプのストロボの特徴としては、スピードライトより最小値の光量が強い(大きい)ものが多いので、商品サイズによる影響が少ないことや、短いタイミングで連続してストロボを発光させる時に非常に有効な照明機材です。
また照明の演出効果にも優れており、アンブレラやソフトボックスなどのアクセサリーで光を拡散・バウンスさせたり、光を柔らかくすることなどライティングの自由度は増していきます。
初心者の方がモノブロックストロボを使う時に注意したいのは、「最小の光量が大きい」という点と「カメラ上部にホットシューがないタイプ」では基本的に使用ができませんので、お持ちのカメラの構造を確認しておく必要があります。
撮影スペースの狭い条件でモノブロックストロボを使用し、ボケ味を活かした写真を撮りたい時は、モノブロックストロボは、最小光量に設定しても光量自体が大きいタイプがあり、F値を開放(数値を小さい)状態で撮る時はストロボと被写体との距離などの調整が難しくなるので、スピードライトや定常光の方が適している場合もあります。
ストロボ照明機材の補足として、ライティングの難度が上がるジェネレータータイプなどの機材紹介は割愛させて頂きます。
上記が、自然光、LEDや蛍光灯などの定常光照明、ストロボ照明と撮影機材毎の種類と特徴についての説明になります。
尚、照明機材を使用するには、ライト用のスタンドが必要になることもあります。
照明機材を固定するライト用のスタンドの選定には、照明機材の重量を十分に支えられて安定していることが、絶対条件です。
照明機材は壊れやすく、落下して割れたらキケンですので、撮影作業を進める上で安全面にも配慮した機材を選ぶようにしましょう。
4.商品撮影の背景と便利グッズ
商品撮影を成功させるノウハウとして撮影背景を選ぶことも大切です。
イメージ用の写真であれば壁紙や布地を背景にして、様々な演出効果が狙えますし、説明用の商品写真では単色のペーパー背景などで、商品部分を際立たせるクローズアップ効果もあります。
しかし、初めて商品撮影にチャレンジする場合は、あまり凝った撮影背景を揃えるのではなく、まずは単色(ホワイトor薄いグレー)のペーパー背景からスタートして、商品写真を正確に撮る練習をしていくことが大事です。
ホワイトや薄いグレーの撮影背景は、商品撮影をする上で、色の影響を受けにくい背景ですので、練習用としてだけではなく、説明用の商品写真の撮影背景として適しています。
もちろんライティング次第で陰影のあるイメージ写真にも応用できる万能型の背景です。
撮影テクニックのノウハウ記事では、撮影する商品ごとにガラス素材や壁紙素材を使い、綺麗な写真に魅せるコツが書かれていますが、撮影背景は被写体となる商品の素材や光の反射具合によって「商品自体の色の再現性」が損なわれることもありますので、単色背景で撮影の基本を覚えてからの応用編として捉えることが賢明です。
撮影に使用する背景選びは、プロのカメラマンでも真剣に探すと一生のテーマになるような重要な撮影用品ですので、背景の豪華さや可愛さだけで選ぶと、撮影対象物とのマッチングが悪いなど、却って商品の品質が悪く見える失敗例になるので注意しましょう。
撮影背景のセッティングを終え、撮影作業をはじめる前に、進行表やトレーシングペーパー、レフ板、はさみ、クリップ、安全ピン、パーマセルテープ(撮影用)など撮影に便利そうな文房具類もまとめて置き、すぐに使えるように準備しておきます。
当然の事のようですが、手元にアレがない!と慌ててしまうのは、よくある「撮影中のドタバタ劇」です。
撮影に集中することを考えれば、撮影まわりを整理しておくことは、見落としてはいけない項目で、写真を撮ってる最中に場所を移動するなどの行動は極力コンパクトにした方が負担なく安心して撮影に集中できます。
5.商品撮影のスペースを確保
商品撮影をする作業スペースは、商品に対して約3倍のスペースの確保が理想です。
この場合のスペースとは「写す範囲」であり、照明を置くスペースも考慮すると撮影作業範囲は更に広がります。
私たちが物撮りの出張撮影で店舗にお伺いした際に、真っ先に考えるのは、「撮影スペースの確保」です。
広すぎる分には問題ありませんが、狭い場合は照明が置けないだけではなく、隣接する壁などからの光の反射の影響が生じる可能性もあります。
商品撮影を成功させるために「自由度のある撮影スペースの確保」は前提条件となります。
撮影中は、商品の移動やセッティングの変更、照明機材やレフ板の位置など作業が進むに連れて人や機材の移動が頻繁に行われることが想定されます。
モデルを使った商品撮影では、着替えやヘアメイクを行うスペースも必要となります。
撮影スペースの考え方は、商品サイズやカメラや機材の位置関係だけではなく、人の動線も含めた確保・準備が必要です。
綺麗な写真の撮影術やテクニックを学んでも、撮るために有効なスペースが確保できなければ、商品撮影を円滑に作業することはできませんので、手間であっても撮影スペースの確保・検討は十分に行いましょう。
商品撮影を成功させるためのノウハウ|撮影編
いよいよ商品撮影を成功させるためのノウハウの撮影編となります。
これでシャッターに手をかけることができる!と意気込んでしまうかもしれませんが、撮影編ではカメラを構えて撮るまでの工程にも大切なことがたくさんあります。
商品撮影の作業は、準備が大半を占めると書いておりますが、撮影前後に何をするかを知ることで、安定した商品写真を生み出すことができます。
やみくもに撮影をしても写真は撮れますが、成功させる商品撮影のコツは、今日も来月も「同じ綺麗な写真」を撮り続けるためのノウハウを身に付けることです。
6.商品写真の撮影アングル
写真の撮影で使われる用語として「アングル」があります。
似たような用語として「構図」という言葉もありますが、撮影の現場で用いられるアングルは角度、構図は被写体(商品)が写真として写る範囲でのレイアウトや寄り引きの具合を表すことが多いです。
商品撮影において撮影アングル(角度)を変えることで商品のイメージを変えることが出来ます。
物撮り写真では、ややハイアングルの客観的な視点から撮影した写真を軸に水平アングルやローアングルで商品を間近に感じるイメージカットを撮影するのが基本となります。
撮影アングルは角度が高い、低いだけではなく、横や斜めの角度もアングル調整の範囲となりますが、慣れない内はバリエーションを欲張らずに基本的な高い低いのアングルで撮影することをお薦めします。
商品写真で落ち着いた印象のアングルは、自分が商品を前にして、覗き込んだり、離れたりする、人間の自然な視点移動を基準に考えると、消費者に伝わりやすいアングルの商品写真になります。
逆に落ち着かない商品写真は、「斜めアングルの写真」や「奇抜な構図の写真」です。
こうした違和感を感じる写真にならないようするためには、カメラを構えた時に写真の水平や垂直をしっかり固定した後で、撮影アングル(角度)を決めていくことです。
物撮り撮影の現場でプロのカメラマンでも三脚を利用してアングルや構図を固定させる場面はよくあります。
三脚を使うことで、統一感のある安定した商品写真が撮れ、後処理で角度補正をする手間も省けます。
同一の商品やカラーバリエーション撮影などで、アングルのパターンを増やしたい場合は、アングル毎に三脚で固定した位置にテープなどで目印を付けておくと、より統一された商品写真になります。
また数量が多い撮影の時に商品自体を移動させたり、角度を変えたりと繰り返しの動作が多くなり、撮影時間が長くなると、カメラから離れて戻るという行動が疲れることもあるので、そんな時はリモート撮影ができる機能や機器を併用すると負担軽減に役立ちます。
7.商品撮影のカメラ設定
商品撮影におけるカメラの撮影モードは「マニュアルモード」に設定します。
ストロボ撮影以外の自然光の撮影時には「絞り優先」などマニュアルモード以外のカメラ側の撮影モードの設定を推奨する記事もありますが、初心者の方もマニュアルモードを薦めます。
物撮り以外の撮影テクニックとして多様な撮影モードを試すことは有効な手段ではありますが、物撮りに関しては、マニュアルモードを先行して覚えることで、カメラの基本的な勉強にもなります。
絞り(F値)、シャッタスピード、露出などの関係性については、別の機会に詳しく記事にしますが、今回は、商品撮影のカメラ設定を安定させるということを前提に考えていきます。
商品写真を撮影する回数が1度きりという人は少ないと思います。
ネットショップ運営者が撮影する場合、扱うジャンルにもよりますが、月に何度も撮影する機会が巡ってくるケースもあります。
そうした時に撮影する度に、カメラの設定が違うという状況は商品写真を統一するという部分でマイナスの印象になることがあります。
理想としては、いつでも綺麗な同じ写真が撮れることが大事です。
それを実行するには、納得のいく写真が撮れた時のカメラの設定値や照明機材の位置関係を覚えていれば、撮影をする度にあれこれと設定方法に悩むことが減るということです。
具体的にカメラ設定の情報として最低限控えておきたい項目は次の項目となります。
・撮影時の絞り(F値)
・シャッタースピード
・ISO感度
・ホワイトバランス(色温度)
※RAWデータによる撮影の場合
特にメモ書きで控える必要はなく、こうした撮影時の個別情報は過去に撮影した画像のプロパティでも確認することも可能です。
欲を言うのであれば、撮影時に使用した照明機材の高さや角度、被写体との距離も計測して控えておくことが理想ですが、最低限、上記のカメラ設定の情報があれば、この設定値になるように試し撮りをしながら、照明環境を再現することもできます。
撮影背景ごとのイメージ写真、説明用の画像を撮影した時のカメラ設定値を確認してから作業を始められたら、「撮影環境の再現精度」は確実に向上します。
撮影のコツやテクニック記事では「いかに綺麗に撮るか」という考えから小難しい「絞りと露出の関係性など」の記事が目立ちますが、静物撮影において誤解を恐れずに書くならば、上手く撮れた状況・設定値を完全に記録するなら、絞りやシャッタースピードなどのカメラ設定は、自分の好きなように決めれば良いと思います。
理屈としてのカメラ設定のノウハウも否定はしませんが、写真が上達するコツは、「迷わずたくさん撮る」というのも1つのテクニックですので、設定値に振り回されずに撮り進める方法を提案することも大事だと私は感じます。
8.商品撮影のライティングテクニックとコツ
前項のカメラ設定と同様に商品撮影を成功させるノウハウとしてライティング(照明設定)も基本パターンを決めて行うことを推奨します。
商品撮影のライティングは、「照らす」、「輪郭を出す」、「バランスを整える」の基本的な3つのライティングテクニック(パターン)を覚えておくと商品写真が安定します。
自然光、ストロボ光などの制限なく、商品撮影で使えるライティングの基本テクニックを3つ、ご紹介します。
照明位置が決まったら、高さ、照射角度を実際に撮影しながら調整します。
このライティングの特徴は、左右の明るさに差があることで、光の当たる逆側は商品の影が出ます。
商品に明暗差が出過ぎている時は、商品の暗い部分に光が回るようにレフ板などで調整し光を回します。
また、陰が強い場合はトレーシングペーパーなどで光源自体を柔らかく拡散させます。
こうした場合、光の強弱を利用すると商品の輪郭を出すことが出来ます。
照明(光)の配置の順番としては、商品の後方の照明から決め、逆光気味に商品の輪郭が出ている状態を確認します。
後方のみの照明だけでは商品は暗くなるので、前方にもう1つ照明やレフ板を置き商品の明るさを調整します。
この時のコツは、後方の照明が前方の照明よりも強くなるように(後>前)ライティングし、逆光状態をキープすることで商品の輪郭を演出できます。
最初にできるだけ商品の真上(または商品よりやや真上後方)に照明がくるように設置します。
トップライトを置くことで商品にできる陰が真下に落ちていくことになります。
このライティングの特徴は商品の立体感や奥行きの見え方が自然な状態になりますので、商品撮影の定番ライティングとも言えます。
トップライトの配置は、必ずしも真上である必要はありません。
撮影場所や照明機材の都合でトップライトが真上に設置できない場合は、適宜商品の前後にレフ板や照明を追加するなどして陰を消していくこともできます。
商品撮影のライティングは照明をたくさん配置すれば演出効果が高まるということではありません。
撮影する対象物を観察しながら、まずは3つの基本的なライティングのテクニックとコツを利用して撮影し、オリジナルライティングを構築・応用していくことが成功する近道です。
ご紹介したライティングパターンは、レフ板などを使うことで、すべて自然光のみ、または照明機材1つで実現できるものとなります。
高価な商品撮影キットを購入しなくても、基本的なライティング方法を知り、商品毎に配置を変えるなどしてライティングは応用力が身につきます。
まずは1灯でライティングする。
いつの時代も物を照らす太陽は1つしかない、これが撮影ライティングのはじまりです。
9.商品写真のフレーミングのコツ
商品を写真の画面内にどう切り取るかを決めるフレーミングは、写真撮影のテクニックとして紹介されることが多い撮影用語ですが、商品撮影の分野に限っては、フレーミングのテクニックやセンスを多用する時には注意が必要だと感じています。
フレーミングは、イメージ写真やバナー宣伝用の画像で考えてもネットショップごとに変化することは明白で、仮に商品ページの掲載写真で奇抜なフレーミングで撮影をすれば消費者の心象を悪くすることもあります。
フレーミングテクニックによる写真表現の考え方は様々ですが、商品写真を撮影する際のフレーミングとは、商品写真を閲覧する人の視点を、伝えたい部分に誘導するためのものです。
つまり、伝えたい商品を活かすことです。
基本的には商品全体が中心に撮影されるフレーミングと、素材部分を強調したフレーミング、無加工で1枚の写真を使って文字スペースを空ける構図が定石です。
素材のUPやパーツ写真については、商品のポイントになる箇所にクローズアップして、ジャンルによって高さやアングルも統一して撮影していきます。
例えば、品番Aの商品が5色展開で、色ごとにフレーミングもアングルも撮影カット内容も統一されずに公開しているとしたら、商品ページを見た消費者は「商品の何を比較させようとしているのか?」、「商品のアピールポイントはどこなのか?」が不明瞭になります。
撮影の段階でフレーミングを統一することが難しい場合は、予め余白を作った(引きの写真)状態で撮影をし、後からトリミング処理を行って統一感を持たせることもできます。
「商品の伝えるべき部分を写真で撮る」
一見当たり前のようなノウハウですが、貴金属などの光沢品の撮影、特に指輪の背景演出で、ガラス面の上に商品を置き、その下に花びらなどを置いて、指輪が浮き上がってくるような幻想的な演出は、調整が上手く行われていないと、背景がうるさくなり、「伝えたいものが見えない商品写真」になります。
綺麗な写真と伝えたい意図が分かる写真を両立させるには、何度も撮影を経験することが大切で、商品写真は自分が満足するだけではなく、商品を観察しながら消費者の目線も意識したフレーミングで撮影を心掛けなければなりません。
商品撮影を成功させるためのノウハウ|仕上げ編
商品撮影を成功させるためのノウハウも仕上げ編に入ります。
この章では、撮影が終わった写真データの扱い方や管理、運用方法を中心に紹介します。
商品写真においての仕上げ作業は、「商品画像の合成」、「切り抜き(パス処理)」という加工処理が注目されがちですが、私が考える商品写真の仕上げ処理は、
撮った写真のポテンシャルを上げる作業
このように考えています。
これは単純にコントラストを強めたり、彩度や明度を変更する「脚色」ではありません。
ネットショップに掲載した時に、商品写真が消費者に正しい情報の説明を果たしているか?、またもっと見やすい情報提示が出来ないかを、現像処理を含め補強していく作業だと考えています。
どれだけ商品写真が綺麗に撮影されていても、掲載画像からイメージしていた商品の色あいや材質感、サイズなどが手元に届いた品物と異なれば、ネットショップの顧客満足度は下がります。
理想としては、いつでも、何度撮っても、変わらない商品写真の品質
そして掲載写真だけで、消費者が商品のポイントや特徴を、手に取るように想像できる写真を目標としましょう。
10.商品撮影したデータを現像・編集・管理する
撮影を終えた商品写真の現像や編集管理を皆さんはどう行っていますか?
カメラからパソコンに保存し、メーカー純正の管理編集ソフトで現像処理を行う。
またはフォトショップなどの現像編集に優れたソフトで都度補正を行う人もいるかと思います。
では商品写真を大量に撮影するカメラマンやスタジオもカメラメーカー純正ソフトの使用率高いかと聞かれれば、私の経験上、キャノン製の「Digital Photo Professionalシリーズ」かAdobe(アドビ)の「Lightroom(ライトルーム)」の2択となっています。
この2つのソフトに共通しているのが、現像処理のスピードが優秀、編集管理も直感的に行なえることですが、ユーザーに支持される大きな理由として、「処理ボタンの位置が絶妙」つまりインターフェースが使いやすいことです。
商品撮影では1つの商品に対して、たくさんの枚数を撮ることがあります。
プロの撮影では、月間1万枚の写真を撮ることは珍しいことではありません。
こうした大量撮影を積み重ねていくと、当然ですが撮った分の大量の写真を処理・管理していかなければなりません。
更にデータとして管理している写真を用途別に編集したりと撮影後の写真に対してアプローチする頻度も増えます。
データ管理用と現像用、この機能を2つのソフトで運用することはストレスであり、編集用にもう1つインストールとなると、作業効率は一気に低下します。
キャノンかAdobe(アドビ)、どちらが良いかは、使い勝手や所有しているカメラの対応状況で選択することになりますが、私は所有使用しているカメラのメーカーが統一されているわけではないので、Adobe(アドビ)の「Lightroom」を初期から使っております。
「Lightroom」の優位性については、別の機会を設けますが、プロの撮影業者だけではなく、ネットショップ等の一定量の写真の管理編集が予想される現場であれば、「Lightroom」の使用を強くオススメします。
Lightroom上で、画像の管理はもちろんですが、現像処理に特化した画面、Web用・印刷用への編集機能や写真加工を深く追い込む際のフォトショップとの連携のスムーズさは、バージョンを重ねる毎にパーフェクトに近い操作性になっています。
現場作業においても、リアルタイムに現像後の仕上がりをチェックしながら作業を進めたり、パソコンが置けない場所ではタブレット端末でも編集作業もできてしまうので、パソコンに1本インストールされていれば、作業効率を考えると大きなアドバンテージになります。
撮影後のデータの管理については、綺麗な写真に仕上げるノウハウとは異なる要素に感じるかもしれませんが、関係性は大いにあります。
本記事内でも、商品撮影を行った際のカメラ設定の情報を記録しておくと説明していますが、こうした数値上の記録を元に、実際に現像されたデータの比較・調整を行うこともソフト上で簡単にできるので、「安定した商品写真」を量産することを可能にしてくれます。
ネットショップ運用用途であれば、ソフト上で品番などのタグ情報で商品写真を管理しておけば、過去に撮影されたデータをすぐに検索して、再編集を行うこともできます。
大量の商品写真を扱うコツは、「いかに早く、正確に、写真を仕上げて商品ページに反映させるか」は重要なポイントであり、仮に1,000枚の撮影データ1枚あたりの処理タイムが5秒短縮されれば、1時間半程度の効率UPとなります。
撮影やサイト構築に集中する時間が増えるということは長い目で見ればメリットがあります。
写真の補正テクニックや加工のコツも大切ですが、現像・編集・管理という枠組みで仕上げの工程を見直すことは、商品撮影の成功のノウハウだと感じます。
まとめ:商品撮影の成功ノウハウとは
商品撮影を成功させるノウハウとして4つの章に分類してご紹介しましたが、何か撮影作業のヒントになるものがあれば幸いです。
ネットショップを運営する上で商品写真は大切な要素ですが、売上向上や綺麗さの追求だけではなく、業務として撮影作業を捉え、商品ページに掲載する写真を仕上げる真摯な姿勢も、EC通販サイトの運営企業には求められることかもしれません。
こうした取り組みは、商品撮影サービスを行う業者も然りで、効率化や低価格化のみを売り文句として掲げることで、「伝えるべき商品写真」が、「撮る側にメリットがあるだけの商品写真」になってはいけません。
商品写真の良し悪しは、撮影業者が持つテクニックや知名度だけでは判断するのは難しい分野です。
写真に詳しくない人が撮影した写真であっても、消費者に「 伝えたいことが伝わる写真」は、無機質な写真と比較すれば、綺麗な商品写真と呼べるかもしれません。
本記事の商品撮影を成功させるノウハウには具体的にメカニカルなことや小手先のテクニックは掲載していませんが、
誰でも簡単に写真に向き合うコツは読み取れるはずです。
心のこもった商品撮影とは前提として丁寧な作業の上に成り立っているものです。