撮影業者が語るべきライティング技術
現在のネットの情報では定常光やストロボを使用した「綺麗に魅せる」商品撮影のライティング講座みたいなものを目にすることが多いのですが、こうした記事を読む人の多くは、「これから商品撮影を自分でやってみよう」という人かもしれない。
細かいことを言ってしまえば、光をコントロールして写真を撮るということは、ストロボ1つとっても、メーカーや年式、発光管の経年劣化でも色合いは簡単に変わってしまう。
デジタル写真全盛の今では、そうした現場のライティング作業の差異を補う「デジタル処理」も方法としては一般的ですが、色合いなどをコントロールするのは、やはり「それなりのモニター環境や整備」が必要です。
例えば、物凄いライティングについて細かく書いてある記事があったとして、作成事例として掲載されている写真がコントラストを効かせ過ぎていたり、黒つぶれ、白潰れがあると、「これが商品写真のライティング」として誰かが参考にしていることに驚くこともあります。
私たちのような撮影業務に携わる人間が、商品写真のライティングや撮り方について語るのは自由ですが、根本的に伝えなければならないことがあるとすれば、
読むだけで習得できる技術なんてない!
この前提を無視して、「自己満足なライティング講座」をするのは個人的には好きではありません。
商品撮影をするために、こうした機材を揃えましょう。
この文章自体、怪しいものですww
そもそもライティングのために必要な機材を揃える時は、「撮りたい写真がある時」です。
小物雑貨を扱っている人であれば、もしかしたらストロボなど、敢えて機材を揃える必要がなく、太陽光の方が商品自体の良さが伝わるかもしれない。
写真を撮るためには「光が必要」であり、光の中で最高のものは、「太陽」です。
きっと窓を見れば、晴れでも曇りでも必ず太陽の光は注いでいます。
しかし、太陽光が注いでいる状況で撮影をするだけでは、「ライティング」とは呼べません。
ライティングとは、自分で光をコントロールして、「撮りたい写真」に近づける技術です。
ライティングの基本的な考え方
商品撮影のライティングに限らず、写真を撮る時に意識することは「太陽は1つ」という揺るがない事実があります。
ことネットの記事では、カッコよく魅せるライティングとか、商品を引き立てるライティングとか、何か階段を数段飛ばしするようなステップアップ術があったりしますが、私としては、ライティングとは次の5つの要素で成り立っていると考えています。
1:光の質感(硬いのか柔らかいのか)
2:光の強さ(どこまで届くのか)
3:光の角度(どの方向から当てるのか)
4:光の範囲(面として大きか小さいか)
5:光の演出(人工的に足す部分)
あくまでこれは、写真界の巨匠が語る撮影講座ではなく、私の経験に基づくものなので参考にしないで下さいww
これを読んだだけではライティング技術が身に付くわけではなく、具体的な例など分からないはずです。
この5項目を挙げた理由は、1~4までは、高価な撮影照明機材を使わなくても、「太陽の光」で考えることが出来るという点です。
ライティングを構成する時に演出方法ばかりを気にするということは、太陽光、つまり自然と逆行する行為だということです。
商品撮影におけるライティングの基本的な考え方は、「商品を伝えること」が90%であって、「演出して魅せること」は10%くらいの配慮で丁度良いと考えています。
とはいえ、撮影スタジオや写真マニアによっては、演出に100%全力投球するパターンもありますが、商品写真は、「消費者が購入する判断材料となる写真」であり、商品写真のライティングの基本を考えるならば、過度な演出は避けたいと思うのです。
ライティングの引き算と手抜きは違う
ライティングの基本的な考え方としては上記に述べたようになりますが、業務として商品撮影のライティングを組むとなると、ライティングの5つの要素を駆使していくことになります。
そして意外とネット情報で触れられていないのは、「何を基準にライティングをするのか?」という前提です。
無論、商品撮影の場合は商品が基準ですが、その次の基準は、カメラの設定です。
要は、ストロボや定常光などの照明機材の設定からライティングを組むのではなく、カメラ側の設定を決めてからライティングを行う方が初心者には理解しやすいのかもしれません。
私が自称カメラマンのライティングの記事などを読んでいて疑問に感じるのは、「照明が強すぎる場合は、カメラのシャッタースピードや絞りを変えましょう」と平気で書いていたりします。
それは光をコントロールするライティング技術ではなく、まさに行き当たりばったりの「撮るだけの技術」です。
特殊なストロボを使う時以外は、カメラ側のシャッタースピードはある程度決まっています。
そして、商品全体をシャープに写したいのであれば、自然と撮りたいF値の最小(最高)値が見つかるはずです。
カメラ側で撮りたい設定値が決まれば、あとはストロボの光量などを「撮りたいものに近づけるために調整する」、これがライティングを行うという行為の1つです。
「自分の持っているストロボだと光が強いからカメラの設定を変えよう」という考えではなく、ストロボ光が強いから、どうやって弱く(減光・拡散)するのかを考えるのがライティングです。
商品撮影のライティングは、カメラの知識や光に関する様々な知識と応用が必要です。
そこにある光から設定を詰めていく撮影方法も間違ってはいないのですが、商品撮影でライティング(光をコントロールする作業)というのは、前提としてカメラの設定から組んでいくべきものだと思います。
光を当てる方向や演出方法のパターンばかりを公開するのではなく、まず大事なことは「ライティング」とは何かを知ることかもしれません。
まとめ
商品撮影に関するHOWTOマニュアルは多く存在しています。
ライティングに関しては、多様な立場で見解を述べることの出来る分野でもあります。
しかし、ライティング技術を身につけることは、「実際に撮る、学ぶ、改善する」を繰り返すうちに培われていく技術であり、撮影業者が受け取る撮影料金には、そうした技術料も含まれているはずです。
誰でも撮れる商品撮影BOXやら、簡単手軽にライティング!という触れ込みは、趣味の範囲の写真撮影術であり、なぜメーカーや大手の通販サイト、はたまた売れている通販ショップが例に漏れず、専門の撮影チームを作ったり、撮影業者に任せるのか?、きっとそれは、趣味の範囲の商品写真では消費者に公開できないことを知っているからなのかもしれません。