アパレル商品を扱うネットショップ(ECサイト)の商品撮影を代行していると、依頼先は違いますが、同一商品の撮影に遭遇することがあります。
こうした現象は、製造メーカーやオリジナルブランドを扱う企業のアパレル商品撮影を弊社が担当しており、その後、小売店が仕入れ、再度撮影を依頼されるというパターンもあります。
アパレル商品に限っていえば、先週A社で撮っった商品が、別のBショップも扱っており、同一類似商品が送られてくるというスパンの短さも経験している。
仕入れ時期の関係もあるとは思うのですが、同じような期間に、同じ商品が届くと、撮影をする側としては、差別化も踏まえた何かしらの商品撮影のアプローチ方法を提案することになります。
そんな折に、こんなニュースを目にしました。
大手ショッピングモールに出店しているアパレル店舗が苦戦しているというもの。
以前に書いた記事に2017年12月ごろのアパレル商品を扱うネットショップの売上は右肩上がりだと書きましたが、実店舗、ネットショッピングの違いはあれど、売上の好調と実質的な利益とは比例していない例もあるようです。
ネット通販が手軽になりアパレル商品を扱う分野でも、消費者が少し検索すれば、類似商品の写真がズラッと並んで簡単に価格を比較できてしまう便利な世の中になりました。
消費者側が便利になる反面、販売を行うアパレル通販ショップは、「他社との比較競争」に巻き込まれることになり、類似商品が多ければ、それだけ価格面や商品ページのアピール方法が、困難になる。
今回は、商品撮影を行う業者の立場から、衣料品などの洋服を扱うアパレルネットショップが、今後考えておくべき1つの抜け道について、考えてみたいと思います。
アパレルネットショップの動向
冒頭で触れた、2018年9月の最新の情報によれば、実店舗型の商品の売れ行きは非常に落ち込んでおり、その反面、類似商品を求めてネットショップの方に消費者が流れているという事実があります。
こうしたリサーチ情報を目にすると、アパレル商品を扱うネットショップにとってはチャンスと感じ、商品撮影や商品ページの制作に費用を投じようと考えてしまうかもしれませんが、売り方を間違えれば淘汰されるという二面性を考えておかなければなりません。
アパレル商品撮影をしていて、ここ数年で感じていることは、類似商品が多くなること自体は今も昔も変わらないことで、ファッションという分野で考えれば、流行のアイテムを多くのショップが扱うことは自然の流れです。
私が気掛かりなのは、取り扱う洋服は同じであっても、販売方法も同じというなのはどうなのかな?という点です。
楽天市場でアパレルジャンルを開いてみても、ネットショップ毎のオリジナリティーを考えた場合、個性があるようで無いネットショップが増えている。
アパレル分野で楽天市場やヤフーショッピングを見ると、「売れてるショップ」の傾向に合わせ過ぎて、ひどい場合では、着用モデルが他社と被っていたり、似たようなデザインページで、販売を継続している。
こうした現象を誘発しているのは、代行業者の責任もあると感じています。
商品ページの説明文やレイアウトは、代行業者に頼むべきではない!と叫んでおりますが、商品写真をはじめ、ネットショップの販売ページで大事にすることは、消費者への影響です。
A社が「ゆるふわスカート」というキャッチコピーでページ構成がされいれば、B社も似たような書体で「ふわふわスカート」など類似した表題を付け、説明文はどこも同じ内容の文章が量産されている。
商品ページ全般を代行業者に頼めば、無難なデザインと、商品の説明文を入力して洋服をアピールしてくれますが、正直なところ、ザッと商品一覧を見ても個性など無く、消費者は販売価格で決めるしか無い。
しかし、今後は消費者の選択肢は価格だけではなく、もう1つ増えることが予想されます。
アパレルネットショップの動向としては、同じ商品を扱っているライバル他社に向けた戦略で済んでいる状況が、実店舗の販売からネット通販にシフトしてくる有名メーカー・ブランドの商品が、同じ楽天市場で、同一価格&類似商品としてネット販売されたならば、消費者が今後どう動くのか?
売れる洋服が出れば、後追いで他のネットショップも似たような商品で追随してくる。
今まで楽天市場やヤフーショッピング内だけで争っていた現象が、実店舗で売れ行きが振るわなくなったブランドやメーカーが参入し、EC通販に力を入れ、類似商品を扱いながら独自性を出してくることも容易に考えられます。
ほんの数年前であれば、楽天市場に出回るアパレル商品と自社サイトで展開する知名度のあるブランド商品は、同じネットショッピングであっても、ECサイトへの考え方は違っていました。
メーカーやブランド商品を扱う企業は、「実店舗に来店させるためのネットを利用」し、無店舗型のアパレルショップはネット経由が全ての販路という特徴があり、サイトに訪れる消費者の意識のすみわけがあったように思います。
しかし、現在、個性的であったブランドも売れ筋商品をコピーしながら生産をし、オリジナリティのある商品を生み出しにくい状況になっています。
ブランド名の有る無しに関わらず、アパレル商品の類似傾向によって低価格競争は進み、消費者もまた価格に対しての意識が過敏になり、新品でなくてもSNSでUSEDを探すなど、アパレルネットショップの動向を見ると、難しい舵取りが迫られているのは事実です。
アパレル商品撮影での個性とは
アパレルネットショップ構築に強いとされる、とある商品撮影の代行業者によれば、「魅力ある個性的なページ」に仕上げると謳っているが、商品ページや商品写真による個性とは何でしょうか?
例に挙げた代行業者の答えとしては、アパレル商品の販売には、モデル着用写真を使って、実際の購入後の商品イメージを喚起させることが大事という結論らしいが、個人的にはそうは思わない。
モデルの着用イメージというのは、商品を特定の消費者にイメージさせる、販売側が売りたいターゲットを絞ることにもなることを忘れてはいけない。
例えば、秋冬のアウターを、20代前半のモデルが着用し、商品ページに掲載したとする。
洋服を単体で見れば、20代だけではなく30代、頑張れば40代にも売れる商品であるにも関わらず、若いモデルの着用イメージで販売機会をロスしてる可能性もあるのです。
こうしたアパレル商品独特の、この服は大体これぐらいの年齢層が着るであろう「購買層を予想するページ構成」は、ネット通販上では慎重に行わなければならない。
もしも上記に挙げたアウターが、他社通販サイトで年代を固定させない「トルソー撮影のみ」で勝負し、30代後半女性に大人気の商品になったとしたら、モデル着用イメージはマイナスの効果だったことを露呈した結果となる。
またノンブランド、OEM商品を扱うアパレルショップが忘れてはならないのは、最近の消費者の購入に至る傾向であり、モデルの着用有無だけで惹かれる時代は終わりに向かっており、最優先されているのは、価格と品質のバランスである。
どれだけモデル着用画像に撮影費用を割いて、立派な商品ページを構成しても、ネット検索で他社で送料無料または、500円でも安く売られていれば、消費者は簡単に安い商品ページに流れる。
とはいえ、ネットショップの信頼度から見れば、キチンと商品撮影を行った方が、消費者の最終的な後押しになることは否定しませんが、モデルを使った方が見栄えやデザイン上効果があると信じているだけであれば、撮影費用を削減して少しでも商品価格を下げることに尽力した方が良いかもしれません。
アパレルに限って言えば、モデル画像が絶対ではないということです!
と、力説しても伝わりにくいですが、楽天市場やヤフーショッピングのアパレル店舗を覗いてみると、多くのネットショップが「モデル着用画像」を使っている。
だから、自社のECサイトでもモデルを使ったほうが・・・
そういった発想になるのは当然ですが、少し立ち止まって考えてみて下さい。
簡単に検索して出てくるアパレルショップの多くがモデル着用画像であれば、なぜそこに戦略的に撮った物撮り写真があった方が目立つという発想がないのでしょうか?
同一類似品を扱うアパレル商品撮影での個性とは、「他社と合わせる」ことではなく、消費者に対して、どう差別化を分かりやすく表現するかです。
同じ価格で、同じ商品、同じようなモデル画像、これ以外に御社のネットショップの特徴は何ですか?
商品ページの作成や登録は、代行業者にありきで考えるのではなく、まずは自社で取り組むことで、どう消費者の目に触れ、届けるのかを見つめ直すことができます。
それは、どんな商品ページ制作の代行業者でもできないネットショップの唯一の個性の出し方です。
アパレル商品を売るための商品撮影
商品撮影の業者の立場からアパレル商品を売るための戦略を聞かれて思いつくのは、やはり最近何かと話題の「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」です。
このサイトをザッと見てみると、人気アイテムにランクインしている商品写真にモデル画像は数えるほどしかない。
細部を見ていけば、ショップスタッフによるコーディネート写真で着用イメージをカバーしており、実に効率的に感じてしまう。
補足としては、ZOZOというECモールの知名度も影響していることを付け加えておきます。
個人的な意見として、アパレル商品を売るための商品撮影として、モデル画像は本当に必要かと聞かれれば、ネットショップ構成のアクセントとして、必要ではありますが、本音はこうなります。
格安モデルを使うなら、SNSで一般の女性に頼む方が効果的な写真ができる
アパレル商品を売るためにモデルを使う理由は、人間が着用することで生まれる風合いです。
ポージングと表現されるものは、こうした服の風合いを活かす動きであり、それができないのはモデルではありません。
格安モデルの特徴として多く見られるのは、棒立ち状態で表情も微妙で「服を羽織っているだけ」、これで1着3,000円程度の撮影料金を払うのであれば、間違いなくトルソーと平置き撮影で商品写真を完成させた方が有効になる。
また最近では、インスタ風の着用画像が非常に支持されている。
一見、ロケ撮影などを考えてしまい費用が必要と感じるかもしれませんが、インスタなどのSNSで自社の商品を着てくれる人を募集すれば意外と反応してくれます。
着用イメージの撮影自体も、プロっぽくするのではなく、上記に挙げたZOZOのスタッフコーデのような仕上がり&スマホで十分撮影可能です。
アパレルの商品を売るために必要な商品撮影が、「説明用の商品写真」と「イメージさせる写真」という点で考えれば、昔はモデルイメージはプロっぽくが主流でしたが、今は「いかに自然に仕上げるか」が重要です。
ザックリ表現してしまうと、スキルもないモデルを扱う撮影業者に予算を費やすなら、自社のスタッフの方が、効果的な着用写真が撮れる場合があるということです。
アパレル商品の撮影には、代行業者に頼むべき部分と柔軟に時流を考えながら対応する部分を考えることが大切です。